僕たちはサプライズが大嫌い
でんでんむし
1章 予定人間のゴミ虫とサプライズ嫌いの正直少女
第1話 僕はサプライズが大嫌い
僕こと
予定こそが我が人生の喜びであり、予定が無い瞬間など、一秒たりとも存在しない。
どんな時でも頭の中は何らかの予定で埋め尽くされている。
それはどんな簡単な予定でもいい。
とにかく、予定と呼ばれる事柄を遂行した瞬間、僕の脳内は快楽物質が発生するようにできているのだ。
そうやって予定を実行する達成感を得る為に僕は生きている。
予定は絶対なる正義。
僕は究極の予定人間。
『予定を極めし者』と言っても過言ではない。
そんな僕を見て、普通の人はどう思うのか?
まあ、間違いなく変人と思うだろう。
ああ、分かっているさ。こんなのはただの病気だ。
僕という人間を好きになる人など存在しないだろうし、むしろこの本性を知れば、多くの人から嫌われるに違いない。
僕は今、高校一年生なのだが、一つ分かったのは『本当の自分』は隠して生きなければならないという事実である。
僕が予定を愛する変人であることは、決して知られてはいけない。
クラスで存在しているのかどうかも分からないどうでもいい存在。それを演出して生きる必要があった。
その試みは、現状では成功していると言っていい。
こんな変人の僕だが、なんとかクラス内でも目立たず、平穏な学園生活を過ごす事ができている。
本当の自分をさらけ出せない生き辛さのようなものは確かにあるが、下手に自分をさらけ出して、他者からの『攻撃』を受けるよりは遥かにマシだ。
今日も黙ってひっそりと、一人遊びみたいに予定を遂行する喜びを噛みしめて、ひたすら毎日を楽しむ。
これが正しい僕の生き方だ。
誰とも関わらず、邪魔をしないし、邪魔されない。そして誰からの影響も受けない。絶対の現状維持。
そんな最弱でありながら、ある意味では最強とも言える僕なのだが、一つだけ天敵と呼ぶべき苦手な事柄が存在する。
それが、今から始まる催し物だ。
「サプラァァァァイズ!」
いきなり、でかい掛け声が教室内に響き渡った。
重ねて大量のクラッカー音。
一瞬、心臓が止まるかと思うほどの爆音だ。
そして、一人の女子に向かってイケメンが近づいていく。その手には花束が握られていた。
イケメンは演技っぽいキザな態度で片膝をついた。
「お誕生日、おめでとう!」
「え? 私に? 嬉しい! ありがとう!」
周りに盛大な拍手が鳴り響き、女子は感動で涙ぐんでいる。
そんな女子の反応を見たイケメンは、満足そうに頷いて親指を立てた。
「サプライズ、大成功ぉぉぉ!」
「よっしゃああああああああ!」
クラス内は完全にお祭り気分となった。催し物は無事に成功したらしい。
そう、これはいわゆる『誕生日サプライズ』というやつだ。
周りの人が本人に黙って企画して驚かせてやろう、という祝い事である。
ほとんどの人が、それで喜ぶらしい。皆が嬉しいと声を揃えて称えあう。
だが、僕はこのサプライズというものが大嫌いなのだ。
この光景を見つめている僕の正直な感想を述べよう。
うるさい、だ。
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