覇者転生 〜スローライフなにそれ美味しいの?
コアラvsラッコ
覇者は転生する
『我が生涯に悔い無し』
荒廃した乱世で俺は武を極め、愛した女を守り、数多の
人々は俺の事を六道覇者と呼び畏怖した。
そんな俺も死の運命は避けれなかった。
切っ掛けは不治の病。
しかし、覇者とまで呼ばれた俺が病で死ぬなど有り得ぬ。
死ぬならば戦場。
そう決め寵妃や家臣達の反対を押し切って最後の戦場に赴いた。
敵は軍神と謳われ、何度も鎬を削った
だが、覇者の名に恥じない、見事な立ち往生だったはずだ。
そんな悔いなく生涯を終えた筈の俺はなぜか赤子に戻っていた。
故事に習って生まれて早々に『天上天下唯我独尊』と宣言してやったら周囲の者達にドン引きされた。
後で分かったことだが、この世界では言葉の意味が違って「誰よりも俺偉い」と言うニュアンスらしい。
そりゃドン引く筈だ。
生まれてそうそう「俺誰よりも偉いから」なんて赤子の分際で曰わったのだから。
そんなわけで生まれてすぐ、色眼鏡で見られた俺は体質と相まって、家族から隔離して育てられるようになった。
これは後で分かったことだが、どうやら俺の家は貴族の家柄で、強力な魔術を武器に辺境伯の地位までのし上がった魔術に長けた一族らしい。
確かにそんな家に魔術を使うために欠かせない魔力が皆無の人間、そんな欠陥品が生まれてしまえば隠したくもなるのは分かる。
寧ろ秘密裏に始末されなかっただけマシだろう。
いくら俺でも赤子の体ではどうにも出来ないからな。
というわけで見事生まれながらに爪弾き者にされたわけだが、それほど苦でもなかった。
ある程度の自由は与えられていたし、ご馳走とはいかないが食うものにも困らなかったからだ。
寧ろ前の世界では、生きるためには虫やら草やら食べれるものはどんなものでも食べていた。なので水で薄めたようなミルクに始まり、カビの生えかけた硬いパンや、味の無いスープなんてものでも食い物なだけで有り難かった。
そんな使用人でも食べないような食事を嬉々として食べていた俺に、周りはますます奇異の視線を向けるようになった。
そんな俺もナイフが握れ立って歩けるようになれば、自分で獲物を狩って肉は自前で調達するようになっていた。今の貧相な食事ではタフな体を作り上げるのには足りないからだ。
本当、自然の恵みというのは有り難いものだと実感する。
そもそもこの世界では水場を巡る争いなんてものも無い。つまり獲物になる獣も豊富で、生きる為だけに争う事の少ない、比較的に平和な世界だといえた。
実際書物などで歴史などを調べてみれば小さな争いは見られるが世界規模の戦いなどなく、大陸を統一した国家も未だにないらしい。
どうやらこの世界には野心あふれる傑物はまだ現れたことが無いようだ。
だから、思い立った。
俺がその最初の人間になろうと。
そのために必要な物。
それは知識だ。
前世の知識は持ち合わせて居るが、この世界に関しては無知蒙昧。
だから俺はこっそりと、出来得る限り家にある大量の書物を読み漁った。
気配を消す技術は前世から踏襲済みなので、誰にもバレる事は無く。
だから周りは俺がここまで知識を身に着けていることなど知りはしないだろう。
というより一族の恥さらしと疎まれている俺に興味のある者などほぼいないのだ実情だ。
まあそのおかげで誰にも干渉されることが無く知識を貪れた。
そして知識を得て分かった事は……。
どうやらこの大陸の軍事の主力は魔術。
だから強力な魔術師が軍事の中心となり国を動かしてきた。なので貴族の多くが魔術師で、その魔術師の保有数が戦力に直結しているという事。
政治的な側面では各国共に安定し農耕は盛ん。飢饉などイレギュラーが無い限り自給自足が出来ている。
商業面でも通貨は統一されており物物交換なんてものはほぼ存在しない。
こと文化的なレベルは雲泥の差で、旧遺物を漁って飾るだけの前の世界と大きく異なり、この世界では創作が一般的で歌や絵、建築なんかもそれに該当した。
はっきり言えばこの世界の人間達からすれば前世の俺達は野蛮人といって良いだろう。
そして肝心の各国間の情勢はというと大陸中央を走るメラルーシ山脈を隔てて東と西に分かれ、大国と呼べるのは西のアルカンディア王国と東のメリケヌス帝国。その二カ国は覇を唱えるでもなく、周辺諸国や、亜人や蛮族と呼ばれる人間族以外の種族と軽く小競り合いをしている程度だ。
故に戦略面は相当に遅れている。
効率的な戦術なんてものもほぼ存在しない。
基本魔術の撃ち合いで、強い魔術を放った方が勝ち。白兵戦は主体ではない。
流石に剣や槍といった武器はあるが、それを効果的に使うという武術などは発展どころか概念もないようだ。
なにせ近づく前に魔術でやられるのが常だから。
つまりそれだけ、どの国も戦力は魔術に依存し、だからこそ魔術師は武力と権威の象徴にもなっている。
それを鑑みれば俺の立場も良く分かる。
さぞ親の落胆は激しかっただろう。
何せ魔術という軍事力で今の地位まで成り上がった貴族という家柄なのだから。
だが知らぬ。
そう俺の知ったことではないのだ。
折角新たな生を受けたのなら、俺は俺の道を突き進むのみ。魔術だかなんだか知らないが、俺の覇道を何人も邪魔する事など出来ないのだから。
「ワッハッハハ」
俺は
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