第2話

 突然の事になっちゃんは戸惑った。


 目の前にいたはずのお友達がいない。

 慌てて後ろを振り返って見ると、母親も居なくなっているではないか!


 それに、ここが公園じゃないのはなっちゃんの目にも明らかだった。



 石造りの広間に、変な服を着た知らない大人達が沢山いて、ジッとこっちを見ている。


 途端に恐怖と心細さにその目が潤む。


 そうなると、なっちゃんの我慢はあっと言う間に限界を迎えた。



「うぇーーーー!!!ママ!ママーーー!!」



 その場には1人だけの子供だったが、周りの大人達の反応は冷ややかだ。同じ境遇であろう者達も、自分の置かれた状況にまだ順応出来ておらず、子供の泣き声に不安を増幅させるばかり。



 それを見て、何人かの者が素早く動き出した。


 泣き叫ぶなっちゃんの手を無理やり水晶に乗せその反応を見ると、深いため息を付いて一言『無能』と言い放ち、メイドの1人に部屋から連れて行く様に命じた。


 メイドに手を引かれたなっちゃんは、別室に入れられて『大人しくここにいる様に!』とそのまま1人残された。


 慰めの言葉もなく、泣き続けるなっちゃん。


 部屋にあったベッドで丸くなり、そのまま泣き疲れて眠りに落ちて行った。





《サイド 王宮》



「王様。今回の召喚は概ね良好な結果となりました。このまま育てて使える様に手配して宜しいでしょうか?」

「うむ。我が国に尽くして仕える様に教育せよ。それと、早めに隷属の紋を刻むのも忘れるでないぞ?」



 淡々と事務的に話が進めらる所から、これが初めての召喚では無い事が伺い知れる。


 そして、便利な道具を他所から手に入れた程度の反応。会話をする者達からはそれ以上の感情は出ていなかった。



「かしこまりました。それと……例の子供は如何様に致しましょうか?」

「ふむ……鑑定の結果は『無能』なのであろ?それでは、可哀想だがここに置くことは出来んな。幾らかか持たせて教会にでも行かせる様にせよ」

「ははっ!」



 そうして、召喚された者達の行く先が、本人の預かり知らぬ所で確定された。


 中には異世界転移に喜ぶ者もいたが『知らぬが仏』であった。



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