対応と呼び出し

 

 殿下との関係をローズお姉さまから聞いた翌日。

 お父様はその話の内容を伝えるために再度王宮へ向かいました。ローズお姉さまはもう逃げる必要もなくなったからなのか、まだ少し落ち着かない様子ですが部屋にこもることはなくなりました。現在は罰としてお父様から処理するよう言いつけられた書類と格闘しています。


 今回のローズお姉さまの行動は褒められたものではありません。話を聞いた後にお父様にこっぴどく叱られていましたが、あの行動のせいで夜会の中、私がフロイデン殿下から求婚られることになってしまいましたし、そのせいで不必要にお父様のみならず王宮、王家まで動くことになってしまいました。

 夜会の前のやり取りでも報告していれば、このような事態は回避できていたでしょう。


 今回の件に関して主な責任はフロイデン殿下の暴走にあるのは間違いないでしょう。しかし、事前にこうなる可能性を知っており報告を怠ったローズお姉さまも責任はあるでしょう。


 一応、今回のように判断の時間を確保するために報告を遅らせるようなことをすることはあります。まあ、この場合でも目上の者には報告するのが普通ですが……

 しかし、今回に関しては双子の私が夜会に出席することが最初から決まっていましたので、フロイデン殿下に勘違いされた結果意味のないものになりました。もし、私が夜会に参加していなければ一応先延ばしにはできたのでしょうけれど……。いえ、殿下の動きを止めることはできないでしょうから、やはり意味のないことでしょうね。

 

 あれこれ考えたところでもう起きてしまったことなのでもうやめて、これからのことを考えておいたほうがいいでしょう。


 現在、お父様が王宮に報告に行っていますが、報告の後どのような流れになるのか王宮側の出方の予想がつきません。

 すでにお父様がローズお姉さまへのフロイデン殿下の婚約打診はお断りしていますが、一度断られた程度で諦めてくれるのか、フロイデン殿下の状況を鑑みるとなかなか難しい気がします。

 最悪、あの場にいたのは私なので、こちらにも婚約の打診が来る可能性があります。


 私もお姉さまも婚約者はいますが、どちらも家の立場であるため王宮から婚約を強制された場合、断ることは困難です。お父様の話を聞いた限り、今のところ強制するほどの圧はかけられていないようですが、今後どうなるのかはわかりませんからね。



 そうこう考えているうちに翌日になりました。

 ローズお姉さまの様子もだいぶ落ち着きを取り戻し、いつも通りの静かなお姉さまに戻っています。

 まだ、お父様から罰として受け取った書類を処理していますが、もともとこの手の作業が好きでしたから苦もなく作業を進めています。量も量なので当分の間は書類と格闘することになるでしょうけれど。


 昼を少し過ぎたころ、お父様が少し怒気をはらんだ表情をしながら帰ってきました。


「おかえりなさいませ。お父様」

「ああ、今帰った」


 たまたま帰還のタイミングに居合わせた私が声をかけると、表情をいつものものに戻し返事を返してきました。その後、何かを探すようにすぐに私の周囲を見渡しました。


「ダリア。ローズは今どこにいるかわかるか」

「今ですと、おそらくお父様に渡された書類を処理していると思うので、自室にいるかと思います」


 昼食の後、書類の続きをすると言っていたので別の用事が入っていなければそのはずです。


「そうか」

 

 お父様はそう短く返事をすると、近くに控えていた執事にローズお姉さまを呼びに行かせました。


「ローズが来てから詳しい話をするが、お前たちに王宮から呼び出しがかかった」

「私も、ですか?」

「ああ」


 ローズが呼び出される可能性は高いと思っていましたが、私も同時に呼び出されるのはあまりいい予感はしませんね。

 最悪、どちらでもいいからフロイデン殿下と婚約してほしいという圧がかかる可能性は否定できません。

 

 お父様も私たちを連れてくるために戻ってきただけで、呼び出しの理由をまだ聞いていないようですね。

 理由も告げずに呼び出すというのは普通では考えられないので、これは最悪の可能性を考えておいたほうがいいのかもしれません。



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