報連相はしっかりしてくださいませ!
「すまないが、そうも言ってられないんだ。ドアを開けてくれないか」
「無理です!」
ローズお姉さまはお父様の問いかけにも即答でそう返してきました。
これまでの反応を返してくるとなれば、さすがにフロイデン殿下との間に何があったのか聞かなければならないでしょうね。気弱なローズお姉さまがここまで強く拒否を伝えてくるのも今までありませんでしたし。
「どうしてもか?」
「だって、ここから出たら私をあの殿下のところへ連れて行くのでしょう!」
なるほど、そういうことですか。
相手は王族ですし、親が殿下の要求に応えてしまえば娘であるローズお姉さまに拒否権はありません。お父様が殿下から直接言われたくらいでは許可するとは思えませんが、この国に属する貴族である以上、殿下より上の方から命令されてしまえば拒否することは難しいですからね。
昨日の夜会を欠席したのもこれが理由だったのでしょう。
「そんなことはしない。ローズと殿下の間にどのようなやり取りがあったのかを聞きたいだけなんだ」
「……本当、ですか…?」
「ああ。この状況でウソを言うようなことはしない。今までもそうだっただろう」
「…………はい。わかりました」
必死に部屋の中に入らせないように抵抗していたローズお姉さまでしたが、お父様から否定の言葉を聞くとあっさり抵抗をやめ、私たちを部屋の中に招き入れました。
そうして私たちを部屋に招き入れてからしばらく、最初は警戒していたのか少し落ち着かない様子だったローズお姉さまが落ち着いたところで、お父様が話を切り出しました。
「仮病を使ってまで部屋にこもっていた理由はわかったが、殿下との間で何があったのか教えてくれないか?」
「その、えっと……――」
お父様の言葉に恐る恐るといった感じに殿下との間にあったことを説明し始めました。
フロイデン殿下と直接面識のなかったローズお姉さまが初めて接触したのは学園の中。
いつものように図書館で読書をしているとお姉さまのところへフロイデン殿下がやってきたようです。その時フロイデン殿下は少し視線を向けてきただけで、特に何か声をかけてきたわけではなかったと。
それでその数日後、同じように図書館で本を読んでいると殿下がやってきて話しかけてきたらしいです。話の内容としてはどこの家の者なのか、どのような本を読んでいるのか、といった他愛のない内容。
この時のローズお姉さまとしては、あまりかかわりたくない殿下の相手を何とか凌いだくらいの認識だったようですね。
しかし、その対応がフロイデン殿下の琴線に触れたのか、その日からちょくちょくフロイデン殿下はローズお姉さまの元へ訪れるようになっていったと。
学園内では私とローズお姉さまは一緒に行動することが多いですが、お姉さまが図書館へ行っている間は別行動をとっているので、その間に遭遇したのでしょうね。
それが今からおよそ1月前の話。
そして3日ほど前。夜会の2日前に学園で例によってローズお姉さまの元へ来たフロイデン殿下が、お姉さまに対し次の夜会に参加するのかと確認をしてきて、その場では参加すると返事をしたものの嫌な予感を察したローズは仮病を使って夜会を欠席したという流れのようです。
結果として参加していた私がフロイデン殿下にローズお姉さまと勘違いされ、あの状況が発生したということのようですね。
…………そのようなことがあったのなら隠さずしっかり報告してください! ローズ姉さま!
最初の接触ならともかく2度目の時点で報告してくれていれば、今回の事態は回避できていたでしょうし、夜会の前日だったとしても私が急遽欠席する形をとることで回避が可能でした。
私としてもあのような場面に遭遇することはなかったでしょうし、フロイデン殿下とデリエント様の婚約が白紙になることもなかったでしょう。
今更のことではではありますが、本当に報告・連絡・相談はしっかりしてくださいませローズお姉さま。
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