ハッピーニューイヤー

翠 颯太

ハッピーニューイヤー

 新年あけましておめでとうございます。パソコンに向かってこんなことを言って嘆息している。世間は新年を迎えたということで、大賑わいである。初詣やら年越しカラオケやら、なんやらと騒々しい、いや羨ましい。地元に帰ってくると、安堵感と同時に押し寄せてくる孤独感、これがたまらなく嫌になる。どちらかというと、中高と友達が少なかった私は、帰省すると大体独りぼっちだ。厳密にいえば会う人が全くいないわけではない。しかし、どうしても他人の事と自分のことを比較してしまう性格らしく、そのせいでなぜだか暗い気持ちになる。損な性格である。私は本来こんな性格なのかもしれない、根暗なのだ。先だっても彼女と別れたし、いよいよ何も残っていない。自分磨きの時間が増えたと言えば聞こえはいいが、実際のところ大きな精神的支柱を失ったわけで、深刻なことだ。そのせいもあってか、今年の帰省はなんだかいつもより寂しい。孤独感というと大げさなのかもしれない。年始だって飲みの予定でいっぱいなのだ、充実しているではないか。んん、違うのだ、何かもやもやするところがある。癌かもしれない。飲みに行ける友達はいるが、年末年始を一緒に過ごせる深い関係の人間が私にはいないように見える。傲慢だが、そういう存在が欲しい。きっと私の癒えぬ孤独感の正体はそれである、親密な友情。それに飢えている。これからどうこうできる問題でないことは理解している。積み重ねなのだ。何年も前から構築してきた人間関係の営み、ああ、いいな。どれだけお年玉を貰おうが、うまいおせち料理を食おうが、地元の友達には勝利できない。ここにきてなんだか自分のすこぶる醜悪な部分が露呈しそうである。私がいま問題にしているのはもっと根本的なところにあるのではないか、つまり他人の幸福そのもの、どうやら私はどうしようもないらしい。親密な友情云々ではなく単純に楽しそうにしている他者、もっと言えば幸せではない自分への嫌悪、そういった具合なのかもしれない。新年一発目にこんな根暗なことを言っている人間はそうはいないだろうな、初日の出も初夢も、初詣も何も見ず、せずに新年を迎えてしまった。どうか今年は、あらゆる場面で充実した良い年になりますように。

 

 運勢  末吉がよい

 願い事 人間的に成長したい

待ち人 来るかもしれぬ

失物  程なく出てきます

旅立ち 一人旅もしてみたい

商売  馬車馬のように働くべし

学問  中国語と韓国語、独逸語もかじりたい、太宰を深めたい

恋愛  その人の内面を見よ 

転居  1Kがよろしい

病気  健康第一 お酒はほどほどに

縁談  とにかく多くの女を知りたい

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