#3
あのままの調子なら、きっと今は、もう少しだけでも、幸せだったことでしょう。
受験が終わって合格発表を待っている頃から、よくわからないけどなんかつらい、といった感じるようになりました。勉強を苦行だと感じました。それでも勉強を続けました。部活が終わったら塾に直行して夜八時まで勉強していたので、通常帰宅は九時過ぎでした。
正直、きつかったです。
でも、私より学校までの所要時間が長い子なんてうじゃうじゃいましたし、塾に行くのも部活を頑張るのも普通です。
高二になったら、いくつもの役職を掛け持ちするようになりました。昼ごはんを昼に食べられないことは普通で、休み時間に早弁したり、僅かながらも睡眠に充てたりしていたら、当然友達と過ごせる時間なんかあるわけがありません。気付けば、また私は独りになっていました。そうして勉強と仕事で忙殺されている頃。
私は壊れました。
ネットだけが私の居場所となりました。この世はあまりにも難しい。人間なんてさっぱりわからない。世界はまるで監獄のよう。そんな思いを口にする人たちを見て、もしかして私もそう思っているのかもしれない、と思えました。
任期満了を前に、仕事はクビになりました。自主勉強もできないし、症状のせいで授業を聞くこともできないし、部活でも私は用無しだし、ピアノで輝かしい結果を残したわけでもない。私は今まで頑張っていたつもりになっていただけで実は何もできていなかったのだと思いました。私は線路に飛び込むのに最適な場所を探そうと思い立ち、学校を抜け出して無心で歩いていました。
ある日いつも通りネットサーフィンをしていると、とある女の子をいじめた加害者への、溢れんばかりの「死ね」を見ました。いじめられた子は、精神を病んでいたそうです。私は、いじめの後に病んだ見ず知らずの彼女と、同じ道を辿っているような気がしました。私が歩く先にあるのは「死」だ。加害者は殺人犯だ。そう思った瞬間、自分にブーメランが突き刺さりました。
私はKをいじめました。Kは自殺こそしていませんので、私は殺人未遂罪を背負っていることになるのです。こんな私に、生きている価値はない。そういう黒い影が、ずっと私に付きまとっているのです。
彼女と私は、全く正反対の立場です。私自身を彼女に重ねてはいけません。彼女をいじめた加害者に重ねるのが正しいでしょう。彼女をいじめた加害者たちは、ネットに実名と顔写真を晒されていました。これは彼らに対する罰なのだろう。罪人として晒される、これがいじめに対する罰なのだろう。そう思っても、私の情報はどこにも出ていません。私への罰は何? なぜ私はここにいる?
いじめをする奴に未来なんてない。死ね。そうだよね、死ねばいいよね。私が私を殺せばいい。殺されても全く構わない。
もうお気づきですよね。
ここを貴方が読んでいる頃、私はもういないでしょう。これを世に送り出し、そして、私は私自身の手で、私に罰を与えるのです。私は監獄に生まれ、監獄で死ぬのです。中学時代、絶対に私より先に死なないでと言った先生がいましたが、彼女だって罪人が死刑に処されることに反対はしないでしょう。
ああ、そういえば、まだ大切な記憶を書き写していませんでしたね。危ないところでした。かつての記録を整理して、綺麗にまとめておくことに致します。跡を濁さずに消えるためです。
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