後日談
数ヶ月が経ち、ケンジは再び「ノスタルジア」の文房具店に訪れた。
「ハルさん、この消しゴムを返しに来ました。もう、私には必要ありません。」
とケンジは静かに言った。彼の手には、かつて彼の記憶を消した消しゴムが握られていた。しかし今、彼の目は過去の影に怯えることなく、確かな光を宿していた。
ハルは微笑みながら、消しゴムを受け取った。
「君が自分自身を見つけたのだね。それは、どんな消しゴムよりも価値のあることだ。」
とハルは答えた。
ケンジは、ミナと共に、忘却の街を離れ、新たな人生を歩み始めていた。彼は、記憶を失うことで得られる一時的な安堵ではなく、記憶と共に生きることの大切さを学んだのである。
彼らは、遺跡の近くで小さなカフェを開き、旅人たちに温かい食事と心の休息を提供した。壁にはケンジのスケッチブックから抜粋した絵が飾られ、訪れる人々に彼の旅の物語を語り続けていた。
「これらの絵は、私の母との思い出です。そして、私たちがどれだけ遠くへ行っても、心の中にはいつも家があることを教えてくれます。」
とケンジは客に説明していた。
ケンジとミナは、過去の記憶を大切にしながら、未来への希望を育む場所を作り上げた。そして、ケンジは自分の経験を通じて、他の人々が自分自身を見つける手助けをすることに人生を捧げることを決意した。
消しゴムと備忘録 追求者 @pursue
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