消しゴムと備忘録

追求者

第1話 消えた

 小さな町の片隅で、古びた文房具店「ノスタルジア」が静かに時を刻んでいた。店の主人である老人「ハル」は、店の奥深くにある特別な消しゴムを大切に保管していた。この消しゴムには不思議な力があり、書かれた文字だけでなく、人の記憶までも消すことができたのだ。


 ある日、失意の青年「ケンジ」がノスタルジアに迷い込んできた。彼は過去の辛い記憶に苦しみ、全てを忘れたいと願っていた。ハルはケンジにその消しゴムを手渡し、こう告げた。


「使うときは、本当に必要かどうか、よく考えてからにしなさい」


 とハルは言った。声には温かみがあり、目には何世紀もの知恵が宿っているようだった。


 ケンジは消しゴムを使い、辛い記憶を消し去った。しかし、彼はやがて、記憶と共に大切な何かを失っていることに気づく。それは、亡き両親が遺した愛の記憶だった。ケンジは記憶を取り戻すため、消しゴムの秘密を解き明かす旅に出る。


「父さんと母さんの笑顔... その温もり... 取り戻さなければ」


 とケンジは固く決意し、古い地図と伝説の書を手に、未知の旅へと足を踏み出した。

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