第7話

バンバン、バン

「おい、起きてください!!起きてくださいってば!!」

僕は思いっきりそらさんの扉を叩く。ノックするとかいうレベルじゃない。

「……んぁ?」

あ、起きたんじゃね。なんか声したぞ。

「空さん!!もうここ出ないと学校に間に合わな」

いきなりドアが開いた。

ドアは見事に僕の顔面に直撃。

「痛ぁ……」

「こらこら、てるてる。さん付けしない!それと、敬語も!」

そう髪を結びながらでてくる空さ……空。

そして僕の額にデコピンをした。

僕がさっきぶつかった場所にクリティカルヒット。

「痛っ」

最低だ、こいつ。わざと狙ってきやがった。

「何ぐずぐずしてるの?行くよ、てるてる。早くしないと、遅刻しちゃうよ。ほら、カバン持って!」

そう言っていつの間にか用意したカバンを僕に投げつけてきた。それもすごいスピードで。野球じゃないんだからさ。

それにいつの間に着替えた?早い早い。支度が早すぎる。

「朝食は?」

「食べながら走ろう!」


そう言ってフランスパンを片手に2人で飛び出した。

「いっけなぁい!遅刻、ちこく!!」

どうした、急に。

「ほら、せっかく遅刻しかけてるんだから!やるしかないでしょ」

当然のように言うけど、当然じゃないからな。それは2次元の世界の話だけであって、現実に持ち込んでいいものじゃない。

「気を取り直して……

いっけなぁい!ちこく、ちこく!!

私の名前は間邪まじゃそら!!訳あって昨日、高天原高校、通称高高校こうこうこうに転校してきた転入生!転校初日で友達が出来て、しかもその友達と同居生活をすることに?!しかもその友達は、ものすごい化け物!!それに、転校2日目にして遅刻しかけるなんて……もう、毎日大変!!」

声高くしてぽい感じを出してる。語り部のとこも自分で言うのか。

……待てよ、さらっと、僕のこと化け物って言ったよな?あくまで、化け物はうんこであって僕じゃないからな!!

「よし、来たよ、曲がり角だっ!」

「まて!空っ、反対から人が……」

「「きゃあっっっっ」」

そんな声は届かず、通行人とぶつかった。そうやってはしゃぐから……

「すみませんっ」


……あれ、この服、新品の高高校こうこうこうの制服……


珠数木すずのきじゃん……」

「あら、こんなところで会うなんて。急がないと、遅刻するわよ」

急に冷静になって、スッと立ち上がろうとする珠数木すずのき

「きゃっ」

自分のスカートの裾を踏んで後ろに転んだ。

「大丈夫かい?ww」

笑いながら、転んだ珠数木すずのきに手を差し伸べる空。笑わなければ満点って感じの対応なのにな。

「大丈夫よ」

空の手を使わずに1人で立ち上がった。

「それより、時間は大丈夫なの?」

「余裕」

え?あと10分しかないんだけど??んん?

「バゲットも食べ終わったし、ちょいと走りますか」

そう言い終わると同時に勢いよく走り出した。

それに置いてかれまいと僕と珠数木すずのきもついて行く。


速い、速すぎる。短距離走じゃないんだから。あぁ、まだちょっとしか走ってないのにもう既に横っ腹が痛い。きつい。確かに時間やばいけど、そもそもは空が起きなかったのが悪い。いや、違う。多分起こせた。うんこの力を使えば……。

ダメだな。うん。それは良くない。

しかもなんで珠数木すずのきは空のペースについていけてるんだよ。もうゴリラじゃん。あ、女子に向かってゴリラは失礼か。

「遅いよ、てるてる〜!そんなんじゃ遅刻しちゃ〜う!」

遅刻しかけてるっていうのに、なんでそんなに楽しそうなんだよ。全然疲れて無さそうだし。しかもペース、どんどん速くなっていってる。化け物じゃん。

「あんた、そうとう、体力、ないのねっ」

そうだよだからなんだよ!!

言い返したいけど、僕に言い返す程の体力は残っていなかった。

珠数木すずのきも疲れてきたのか若干ペース落ちてきている。

あぁ、あとちょいで校門につくぞ!!

「2人とも〜おっそいぞ〜」

空は校門に着いて、手を振った。


―それと同時にチャイムがなった。


「はい、2人とも、ちっこくぅ!!」

腹立つ。ほんと腹立つ。そもそも、誰のせいだと思って……

「これ、5分前の、チャイムよ」

あの距離を僕、5分で走ったのか……

え?まじで?結構距離あったぞ……すごいな、僕。

「あんたたち、あの距離をあのペースで走ってきたのよ?10分もかかるわけないじゃない」

は?え?何言ってるの。普通の一般人が走るとそれくらいかかりますけど。

「てるてるって悪魔の力があってなお、その体力なんだね……」

やっぱりか、どうりで、足が速くなったわけだ。やっぱり、見た目だけじゃなくてそういう体力面でも変化があったのか。

僕、これだけ体力ついたんだ。


―もし、光だったら……


いや、そういうのは止そう。

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