〔下編〕❹嵐去り、幸せ来し。


「……皆、大学入学おめでとう」

「ありがとうございます……先生めちゃ泣いてますやん……」

「だってぇ…ぐすっ!教え子が高校卒業して!大学に行っちゃうなんてえっ!ヒック!」

「先生泣きすぎ……」

「お姉ちゃん、よしよし」

「愛さん…しょうがないですね」

俺の病状が落ち着き、本来ならもう少し入院すべきなのだが、今日は如月や廉命達の大学の入学式なので、院長から特別に外出を許可された。まだ一人で歩くのには難しいが、リハビリで徐々に動けるようになってきた。それにリハビリの時は必ず加堂さんも一緒にするようになった。

「ほらほらー!写真撮るぞっ!」

「……周りから見ると…ハーレム、だよね…」

「兄貴…言いたいことは分かるよ……あ、僕写真撮るので皆入ってくださいっ!もちろん生野さんもっ!」

「もちろん生野真ん中ね?」

「いやなんでっ!雷ちゃんも福吉さんも入れよぉ!じゃ、撮るぞー。チーズっ!」

「わぁちょっ……希望さんっ!」

パシャリ。大学の校門でシャッター音が鳴った。如月の卒業式の写真も、こんな感じで皆で撮ったっけ。あの時俺に命を分けてくれた廉命、夢を見せてくれた如月には本当に感謝しかない。だが、一番感謝しないといけないのは……

「舞姫も…色々ありがとうね」

「ううん……あなたが元気でいてくれて良かった。私も看護師頑張らないと」

「僕も医師免許取れるように頑張らないと……」

「私も……教師頑張らなきゃいけないわね」

そう。舞姫は無事に国家試験に合格し、看護師の夢を叶えることが出来た。もちろんこの春から院長の病院で働くことが決まっている。彼女はこの大学の看護学部だが、雷磨はというと……医学部である。普段はアルバイトとして働いている彼はまだ医大生で医師免許を取りたいという。ちなみに院長も福吉さんもこの大学の医学部出身である。

「先生恋愛も頑張らなあかんよ?」

「ちょ…余計な一言」

「お姉ちゃん、進展はしてるの?」

「ここでは…言えないわ……あはは」

「なんか、この前二人でご飯行ってきたらしいよ〜?」

「マジか……」

「ちょっと兄貴……はぁ……」

どうやらこの二人は、上手くいっているらしい。この二人が付き合うにはまだまだ遠いが、この二人なら大丈夫だろう。それに、俺の病気は再発することもあるようで、定期的な検診も必要である。

「いやぁ……生きて良かったなぁ…」

「らしくねぇぞ?死のうとしたら俺達許さねぇからなっ!」

「なんか、孫が出来たみたいだなぁ……」

「………廉命、如月……ありがとう」

この二人にも、もちろん未来はある。だがしかし……ある転機が俺を待っていたのだ。それは如月達の大学生活が始まって丁度一ヶ月が経過した時だった。俺の携帯に、彼女の大学から電話が掛かってきたのだ。まさか如月か廉命が何か問題起こしたのか……そう頭に過ぎるなか、恐る恐る画面に映る応答をスライドをし、電話に出た。

「はい……もしもし……え?」

その内容はあまりにも頭が真っ白になるくらい、衝撃的な内容だった。今度彼女の大学で開催される、ドナーの講演会やランニングシューズの講習会に、講師として俺を呼ぶ、という内容だった。なんと店長には既にそのことを話していて、出張扱いで許可してくれたそうだ。それからそれらの時間や日時を教えてもらい、その電話は終了となった。その日の仕事帰り、帰宅すると温かい食事と舞姫が俺を待ってくれた。

「あ、希望君お帰り!」

「ただいま〜!疲れたぁ……」

「お疲れ様。今ご飯出来たところなんだけど、先お風呂入る?」

「……いや、先に舞姫の飯食べたい…」

「嬉しいなぁ。じゃ、食べようか!」

看護師になっても舞姫が、家事を率先してくれた。大学時代は実習や国試対策で忙しい時は、俺が代わりに家事をしていたが、舞姫とは比べ物にならないほどだ。この先も舞姫となら、大丈夫だと思える。夕食を食べていると、舞姫がこんなことを話してきた。

「希望君、さっき夢玖ちゃんから電話あったんだけど、講演会や講習会の講師として呼ばれてるみたいだね」

「うん。俺も今日電話あってさ…いやぁ驚いたよ」

「ふふっ……体育学部のスポーツ科学科で、シューズの講習会をしようとしていたんだけど、廉命君達が希望君を選んだみたい」

「マジか後で廉命に電話しないと……」

「それに……」

舞姫もこのことは分かっていたらしい。それに、ドナーの講演会の講師として俺を選んだのは、雷磨だった。本来なら医学部によるドナーの講演会の講師が、家庭の事情で当日来れなくなり、彼が俺のことを話したとのことだった。

「私もお姉ちゃんから話聞いてさ…驚いちゃった」

「雷ちゃん経由だろうなぁ………せっかく廉命から命を分けてもらったんだ。俺も精一杯生きないと」

「そうだね……」

入院当日や持病で苦しんだ幼少期の記憶を必死に纏め、ドナーのことも福吉さんや院長に電話等で聞いたり、プレゼンの準備も進め、ドナーの講演会当日がやってきた。


「……ここか……」

「……こんにちは。ご用件お伺い致します」

「…あ、ええと、本日そちらの大学の医学部で、ドナー講演会の講師として来た…生野希望です」

「あら、左右目の色が違う子と全身傷だらけの子から話はよく聞いてますよ。ではご案内致しますね」

「はぁ……お願いします(……あいつら…)」

大学の校内に入り、事務室で受付を済ませた俺は事務員に講演会の控え室に通され、席に座り待機していた。すると、よく知ってる男子学生が入ってきた。

「あ、生野さん!来てたんですね」

「おう雷ちゃん……なんで俺のことを話したんだよ…幾らでもいるだろ。代わりなんて」

「それは……体験した側の人間が語ればまた違うかなって……」

「体験した側、ねぇ……」

「再発の可能性も十分ありますし、それまでに何か伝えたいこととか、生野さんにもあるのかなと思いまして…」

「伝えたいことかぁ……無いと言えば嘘になるな」

「でしょ?僕らも将来医療に携わる人間なので、是非聞いておきたくてですね…」

彼と話してると時間が近付き、彼は教室に戻っていった。そして、講演会が始まる直前、俺は大きい教室の入口前で待機をしていた。教室のドアから覗くと予想以上の人数だが、人数の多さよりも緊張が勝っていた。すると雷磨からLINEのメッセージが送られた。

<説明不足でごめんなさい。実はこれ、後ほどYouTubeに生野さんの顔や声がアップされるものなんです>

「え…いや………すみません。少し電話してきていいですか?」

「どうぞどうぞ。まだまだ時間もありますから」

これもまた予想外のことで驚いた。この講演会はライブ配信でYouTubeに載せられることを知り、携帯を急いで操作し、雷磨に電話を掛けた。

「雷ちゃん……どういうことだよ……」

<あはは。すっかり忘れてました…>

「いやそういう問題じゃ……」

<でも生野さん。僕は生野さんのまっすぐ生きる姿に尊敬してます。一人でも多く、命と夢の大切さを大学内で共有出来ればな…と思います>

「…そう言われると…なんて返せばいいか分かんねぇよ…」

<もちろん、今日の講演会は如月さんも廉命君も見ます。二人は講演中に呼び出してくれても構わないって言ってました>

「…あいつら、何が言いたいんだよ…」

<それは……あなたの名前の通り…>

生きる希望を僕らに語って、後世に受け継いで欲しいんです。そう雷磨が携帯越しに放った台詞が俺の名前の由来を思い出させた。俺はその言葉に対し「そっか。そうだよな」と返した。通話は終わり、教員に呼ばれ、胸を張って教室に入った。

すると周りの学生は俺を見て「可愛い」「小さい」という声を投げてきた。男性にしては背が小さいのは自覚あるが、可愛いという自覚は一切ない…。それでも俺は………語りたい。夢と命の大切さを。手にマイクを持ち、二人の学生と目を合わせ、講演会が始まった。彼らのパソコンの操作で流れるパワーポイントのスライドと共に、震える声で語る。

「……初めまして。本日ドナー講演会の講師として来ました、生野希望と申します。本日はよろしくお願いします!」

「………希望さん……」

「…まずは簡単に俺の自己紹介から。下の名前はゆめって読みます。分かりづらいかもしれないけど、僕はこの名前が大好きです。誕生日は五月一日。日本赤十字社創立記念日に産まれました。ちなみに青春の日でもあります」

「好きなものはシューズとキウイフルーツ。今年で二十二歳で、普段はシューフィッターというシューズのお仕事をしてます」

前日に話す内容を纏めたメモの内容を暗記していたものの、どうやら必要なかったらしい。自然とスラスラと話せる。それは俺の声に合わせてパソコンを操作している廉命と、メモを取っている如月が傍にいるからだと思う。この二人がもしいなかったら……俺はひたすら語った。白血病という持病で苦しんだ時間を…闘病の末まで傍にいてくれた仲間の存在を。

「白血病は血液の癌なので、手術で腫瘍を取り除く等は出来ません…。俺の白血病は先天性で幼い頃からの入退院、抗がん剤治療を繰り返してきて、友達は出来なかったけど普通の高校生活を送ることが出来た」

「でも去年の夏…俺は職場で倒れてしまい、入院が決まったと同時に…余命宣告をされました。それは一年どころか半年……でした」

語れば語るほど、自分が今日まで生きてきた意味を改めて知る。持病で幼い頃から死と隣り合わせだった毎日から解放され、再発を恐れながらも生きている日々についても語った。

「でも…付き合ってる彼女や病院の先生、職場の皆がいてくれたお陰で、今の俺があります。白血病のドナーは二つの方法があり、健康な血液と骨髄血のどちらかを患者の体内に注入することで、白血球を正常値まで減らします。白血病はこれらの症状で…」

「実はこの大学で、俺のドナーになってくれた学生がいます」

「えー、誰誰!」

「男っ?女…?」

「静かに…出てきて……」

俺がそう言うと、パソコンを操作していた廉命が立ち上がり、俺の隣に立った。そう、俺に骨髄血を分けてくれたのは…俺に命を分けてくれたのは…日出廉命だった。彼の派手な傷やケロイドと紅い瞳が、彼の過酷な家庭環境を物語っていて、講演を聞いてる学生は皆、彼を見て驚いている。

彼との身長差により、俺の背の低さがより強調されるなか、俺はまた語り始めた。

「彼が…俺に命を分けてくれた張本人です…。彼とは高校の先輩後輩で、俺の方が一つ上です。余命二ヶ月の時、髪も抜けやせ細っていて、生きるのを諦めて死のうとした時、廉命は俺にビンタして、ひたすら生きて!と言ってきたんです」

「…………いやぁ、あの時は…最期くらい楽にさせてくれって言ってたから……つい…」

ギリギリ視界に入る、遠くの席で夜海や仁愛、凪優がそのことを思い出してはニヤニヤしているのが遠くから分かった。多分、廉命の例の台詞が脳裏に浮かんだのだろう。

「あはは……もしこいつが俺に生きろと言わなかったら俺は……死んでました。でも彼は、僕に命を与えてくれました。そして……」

今メモを取っている彼女は、夢を与えてくれました。そう言い、彼女にアイコンタクトを送り、彼女も俺の隣に立った。

「……彼女は俺に夢を見せてくれました。彼女は寝る度に悪夢を見て…毎日眠そうにしていました。でも彼女には…夢を与えてもらいました。それが、この仕事であるシューフィッターです」

「骨髄移植の寸前、俺は見舞いに来ていたこいつらと揉め合い、突き放しました。でも、精神的な繋がりを経て、彼らとは和解し、今に至ります」

そう。俺と廉命、如月には周りには分からない、精神的な繋がりがある。三人だけの世界があるのだ。あの時、夢の中で憎しみを持った獣と化していた俺を止めてくれた。本来なら夢の中で彼らを殺し、現実世界にも獣として現れ、罪のない人々を殺そうとしていた。捨てられた犬猫の気持ちをかき集めたような憎しみを、その身にまとって…。でも二人は夢の中に入り、俺を止めてくれた。だから…

「本当にこの二人には感謝しかありません。ドナーには必ず守らなくてはならない約束があります。臓器を提供することで身体に負担が掛かります。最悪死ぬかもしれない。軽い気持ちでドナー登録すると必ず後悔します」

「大切な人に臓器移植が必要になれば皆さんもドナーになるか悩むと思います。ですがドナーが患者と適合する確率は予想以上に高くはありません。兄弟なら四分の一…でも非血縁関係者の場合だと、数万から数百万分の一です」

そこからはドナーについて語った。福吉さんや院長からドナーの特徴について聞きまくり、それを七千人分程の生徒に対し語っている。気付けば、二時間程が経過し、講演会は終了となった。

「……はぁ…沢山語れて良かった…」

「お疲れ様でした。生野さんの講演、凄く好評でしたよ」

「まじ…?」

「………ふわぁ、生野さん…お疲れ様です」

「お疲れーっす……」

「おお、例の二人が…。お前ら…本当にありがとう。雷ちゃんもありがとう」

「らしくないですね……あ、お腹空いたでしょ?ご飯奢りますよ」

「懐かしいなぁ……お言葉に甘えて」

これも職場で出来た思い出の一つだった。雷磨の眼鏡の先セルを誤って壊してしまい、彼には酷く怒られたことがあった。何を隠そう……盾澤雷磨は、普段は内向的だが怒るとその場は地獄と化してしまう。あの時は店長と福吉さんの仲裁と飯の奢りで何とか解決したが、あの時のことをまだ覚えていたとは思いもしなかった。食堂に行き、彼が二人分何かを注文した。

「え……何頼んだの?」

「僕のお勧めのもので、ここの学食お気に入りなんです。食事制限とかされてますか?」

「……塩分は控えめ、インスタント食品や加工食品はダメって言われてる。あと生ものもダメかな」

「なるほど。僕も油ものとか苦手で、鶏そば定食がお気に入りですね。兄貴は普通に学生時代、いつもここで大盛りのご飯を食べてて、数々のスポーツで大活躍してました」

「へぇ……確かそれ福吉さんも言ってたな…」

持っていたお盆に鶏そばと酢のものが置かれたが…俺は隣にいる雷磨にアイコンタクトを送った。生まれて初めて学食、というものを経験してみたものの、高校の購買のおばちゃんと重ねて懐かしんでる自分がいた。また母校に遊びにでも行こうか…今度は如月と廉命も共に行きたい。

「お兄ちゃん、講演大好評だったみたいじゃない」

「あ、いえ……」

「さっき大学の先生達が話してたのを見たんだけど、講演の配信見て他の場所でも講演して欲しいと何件か依頼が来てるみたいだよ」

「…マジすか…!」

「良かったですね…生野さん」

「マジか俺達も一緒に行かないといけないのか…」

「如月…廉命……」

食堂のおばちゃんから、予想以上の情報を知った。なんと、俺の講演のライブ配信が全国で配信されたことで、何校か俺宛に講演の依頼が来てるらしいとのことだった。

「良かったらまた食べにおいで。お兄ちゃん、頑張るんだよ」

「…ありがとうございますっ!」

「……またご飯、行きましょうか」

食堂のおばちゃんに軽く挨拶し、席に着いた。その時に丁度如月も廉命も学食を持ってたので相席し、皆で手を合わせた。退院してからより食生活を改善し、食べる量も増やしていっているが、まだまだ一人分を食べ切るには程遠い…。だが、こうして誰かと食事出来ることには変わりはない。箸を持ち、一口蕎麦を啜る。

「…………え、美味い」

「良かった。無理せず食べてくださいね」

「ありがとう……てか如月、お前はもっと食えよ」

「いや……これが丁度ええんですよ」

「駄目。これも、俺のも少し食べなよ……」

「やだ…太る…」

「………まぁ、ある部分とある部分だけはだいぶ太ったけどな……な、廉命?」

「ちょっ!」

雷磨と愛に対し、この二人はいつになればくっつくのだろうか…。如月があまりにも鈍感なのが、廉命の初心っぷりで相殺されている。しかも如月の身体は本当に、本当に成長してしまった。低身長なのに、着ているシャツの胸元が悲鳴を上げているのが、胸元を留めているボタンが限界を迎えてるのが密かに見える。これだけ女性らしく成長したんだ、そりゃあ廉命が惚れるのも納得出来る。

「……早く、告白しねぇと俺死ぬからね?」

「再発の可能性もあるので、廉命君…ね?」

「………いや、何の話…ねぇ廉、命さん……?」

「…………」

正直廉命の恋愛に呆れてる自分がいる。あまりにも告白する気配を感じられないから。あれだけ周りに気付かれて、あの約束も交わしてるというのに、まだまだ告白しようと思う気持ちがないらしい。

「そういえば今仁愛さんは福吉さんとご飯食べてるみたいです……」

「夜海もなんか、加堂さんと飯とか言ってたなぁ」

「凪優は……分からへん」

「あ、凪優さんは兄貴とご飯ですって…」

どうやら他にも恋が生まれていたらしい。それに俺は……この二人が結婚する未来が見える。そして来月……俺はまた大学に、シューズ講習会の講師として来た。


「今日のシューズ講習会の講師として来ました。生野希望といいます。補助として、二人の学生にもお手伝いしてもらいますが、皆さん今日一日よろしくお願いしますっ!」

「補助の、日出廉命と…」

「如月夢玖ですっ!皆よろしゅう」

多分、彼らを拾ったあの時から、二人の恋は始まっていたのだろう。二人に出会ってからは、沢山の大切な人、大切なものに出会えた。大切な思い出もできた。そのお陰で白血病を抑えることが出来た。でも今度はまた再発して、最悪死に至るかもしれない。だが、俺は後悔のないように、今を…これからも…彼らと生きていきたい。

「希望君〜!お帰りなさい」

「遅かったわよ……ほら、しっかり栄養つけなさいよ」

「希望君…生きててくれて、ありがとう」

「生野さん、この前の講演会も大好評だったよ」

「生野〜、また背縮んだんじゃね?ちゃんと食えよ」

「……皆」

シューズ講習会の帰り、色々あって帰りは夜の九時になっていた。やっと帰ってきたと思ったら、部屋に舞姫、愛、盾澤店長、加堂さん、福吉さん、院長が俺の帰りを待っていた。

「希望君……二十二歳の誕生日、おめでとう」

「……ありがとう」

「生野さん、私達もおるやで……」

「如月さん、方言めちゃくちゃ…」

「とか言って可愛いって思ってるくせに…」

「廉命さん、いつ告白するんだろう…」

「さぁ?でも、皆楽しそう」

「ですね……生野さん……もし、あなたの病気が再発したら、僕も治療に加わります」

「あはは……そん時はよろしくな」

「次のドナーは……私や」

この日は俺の誕生日だったことをすっかり忘れていた。どおりで大切な人皆が部屋に来ていたわけだ。でも俺は……この日を待っていた。それは…舞姫にサプライズをするためだ。それは…隣市の宝石店で、指輪を選んでいたからだ。そう、この日に俺は…舞姫にプロポーズをするのだ。彼女の姉である愛は、俺の表情を察して携帯のカメラを構えている。それでも俺は…舞姫に手で隠していた指輪を差し出した。

「舞姫……その、俺と………」

これは、長い長い、俺の余命。実の両親はいないけど、周りには大切な人がいる。大切なものがある。幸せなシューフィッターの夢、分けられた命、如月と廉命に分けてもらったこの二つを、俺は絶対に捨てない。この二つは、永遠に俺の記憶と心臓に閉じ込めているのだから。





𝙚𝙣𝙙 .



<ご挨拶>


この度は「夢命嵐の糸」を閲覧頂き、誠にありがとうございました!!

初めてのオリジナル小説で、シナリオや登場人物、展開の流れなど考えることが思ってたより難しく、専門学生というのもあり国試対策も重なって、何度か挫折したこともありました。ですが、完結まで書けたのは私一人の力だけでなく、閲覧頂いた皆様のお陰です。本当にありがとうございました!


あくまでも「夜狐」は仮名ですので、新しい名前と今作の続編(第二期)を考えております。

字書きとしてまだまだ未熟な私ですが、応援の方、何卒よろしくお願いいたします。

この度は閲覧頂きありがとうございましたっ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る