第40話 捜索開始
「カイト! その、や……ヤバいぞ、あれ!」
真っ赤と蒼白。顔面にその両方の色を浮かべたペルが、ヘリオスの家から飛び出してくる。
「あっ、やっぱりそうなった……?」
「そ、そのぺろんって……あの……お尻が……うぅ……思い出すのもおぞましい……」
大賢者ヘリオンの残した魔法式全自動トイレ。
リュウくんパーティーきってのクール美少女のペルでもその衝撃の前ではこうなっちゃうのか……。
もしこの世界に強さランキング的なものがあるとしたら、このトイレが世界最強だったりするのかもしれない。
そして、かのトイレ経験者ハルは語る。
「あはは、私も最初そうなったよ! でも大丈夫、そのうちよくなるから!」
よくなる……?
あっ、これはあまり深入りしてはいけないやつだと本能で察知した僕は、トイレだけにさらりと流して本題に突入。
「それじゃあ状況をおさらいしよう」
「う、うん!」
「あ、ああ……」
「ゆ!」
「にょ」
ヘリオンの家の裏庭。
素敵な丸型のテーブルをぐるりと囲んだ僕ら。
「誰かがトイレを使うときは家の外に出ようね」という暗黙の了解からの流れで、さっきの僕とハルによる「告白式」? を終えた僕らは、こうして自然と裏庭に集まって脚の先が「くるんっ」ってなってる素敵テーブルを囲んでいるのです。
「まず、僕らが受けた
「ビンフを捜すゆ!」
僕の膝の上にちょこんしたアオちゃんが挙手して発言。うむ、えらいぞ。
「そうだね、魔薬の売人と見られるビンフを捜す」
「で、見つけたら私が隠し通路を通ってギルドへと知らせに行くわけだな」
と、いつものクールさを取り戻したペルが続ける。
「うん。大丈夫そう?」
「来る途中に罠も魔物もいなかったし平気だろう。しかし──驚いたな。まさかこんなところがあるとは……」
「うん、ペルが伝令役を買ってくれたのも助かった。他の人じゃ隠し通路の中に入れなかったもんね」
そう。
隠し通路。
僕とハルが最初壁に「ドーン!」して「くるんっ!」して回転扉みたいになってるとこから偶然入れたそこ。
不思議と他の人が押しても引いても叩いてもうんともすんとも言わない。
それどころか、僕たちが壁の前で急に消えたように見えたらしい。
要するに。
僕たち以外の人には「隠し通路に入れること自体が認識されてない」みたい。
もふもふ天才魔法少女ラク
なんらかのトリガー。
思い当たるのは「ハルのLUK値」か「ステータスの称号『鍵』なアオちゃん」とか? まぁそれくらい。
とにかくいろいろと壁の前でギルド職員たちと試行錯誤したあと、結局入れたのはリュウくんファミリーから一人着いてきてたペルだけだった。
というわけで、ペルにはこうして伝令役を務めてもらってる。
あの時のロンの悔しそうな顔ときたら。
渋くて厳つい最強のおっさんがあんな子供みたいな顔すなんて。
「にょ! この水晶玉で迷宮の中を見放題にょ!?」
丸テーブルの上に置かれた水晶玉を爛々とした目で見つめるラク。
興奮のあまりたぬき化してる。
う~、ふもふもなたぬき姿のラクを見てると、押さえきれない「もふり欲」が……。
「っていっても使い方わかんないんだけどね。前にリュウくんたちが見えたのもたまたまだったし」
「なるほど、このおかげで私たちは先生に助けてもらえたのか」
ペルは水晶玉に向かって両手を合わせてナムナムとお祈り。
「今、なにも映ってないわよね? 前ってどうやって映ったっけ?」
「ああ、たしか転がって落ちそうになったのを受け止めたらだったかな?」
「ふ~ん……ってことは、はいっ!」
ぽ~い。
「わわわ! ハル、危ないって!」
ハルの放り投げた水晶玉をすかさずキャッチ!
「ちょっと! これとてつもなくすごいマジックアイテムなんだよ!?」
「でもなにか映ったにょ」
「え?」
言われてみれば水晶玉の中に人影が。
僕はテーブルの上に水晶玉を置き、まじまじと中を覗き込んだ。
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