第35話 完っ勝っ!

「お連れさんは戦意喪失したみたいだけど?」


 僕の言葉に、ゴーディーは憎しみの色をより濃くしてにらみ返す。


「だからなんだってんだよ? あ? むしろ足手まといがいなくなって清々するわ。どのみち今からテメェらの手足切り取りゃ俺の勝ちだ。死にかけてから泣いて謝っても遅ぇ~からな?」


 たしかにその鋭そうな鎌は当たればただじゃすまなさそう。

 ただし、の話だけどね。


「ラク、ハル、アオちゃん!」


「にょ!」

「うん!」

「ゆ!」


 敵がゴーディーのみになった場合の作戦。

 ラクがハルとラク自身を浮遊魔法レビテットで浮かせる。


「と、飛んだぁ!?」

「マジかよ! 六系統ゴーレム同時召喚だけじゃなくて浮遊魔法レビテットまで!?」

「あの魔法使いどんだけ規格外だよ!」

「やべぇって! 俺たちもしかして今伝説を目の当たりにしてね!?」


 そしてハルは「スリング」に変形したアオちゃんを装備し、行う。


 投石を。


 ビュッ──!


 投げれば急所に当たるハルのLUK「901」を活かした投石。

 威力はアオちゃんのスリングで強化されている。

 文字通り一撃必殺。

 しかも宙から一方的。


「ぐっ──!」


 カンッ──! 急所向かって凄まじいスピードで飛んでくる石をゴーディーはすんでのところで鎌で払いのける。

 しかし鎌は受けるには弱い。

 しかも僕のバフによって素早さ、力、器用さ、HPを大幅に削られている。

 石を受けた鎌は欠け、ゴーディーの顔に苦悶が浮かぶ。


「くっ──卑怯だぞ!」


「卑怯? これはパーティー戦でしょ? 敵の射程圏外から遠距離攻撃を仕掛けるのは当然の戦術じゃない?」


「るせぇ! 男なら正々堂々勝負しろ!」


「正々堂々? 最初に不意打ちで斬りかかってきたのはお前。うちのパーティーメンバーの大事なものを燃やしたのもお前とそっちの女の人。この戦いの中でも魔法による不意打ち。さて、どっちが正々堂々じゃない?」


「へりくつこねやがって……」


「へりくつ? いや、正論だね。そして正義だ。義はこっちにある。僕はお前たちの卑劣な行いに対して怒ってるんだ。そして僕たちは、お前たちに謝らせる。この戦いで。絶対に」


「くっ……なぁ、頼むよ。一対一で戦って負けたらいくらでも謝ってやるからさ。あのニワトリ頭だって弁償する。だからさ……」


「ん~……」


 すがるようなゴーディーの表情。

 罠だろうとわかってはいるけど、仲間を侮辱され、傷つけられた怒りを晴らすためにあえて受けることにした。


「わかった! その代わり、武器とてアオちゃんを使わせてもらうけどいい?」


「ぎゃははっ! この馬鹿ま~じで受けやがった! ひゃっは~! は? スライム? いいぜぇ、いくらでも使えよ! スライムごとき屁でもねぇわ! つか、男に二言はね~からな! 一対一ならこんな弱そうなガキに負けるわけねぇんだよ! あの異様なスペックの女二人に守られてるだけのクソガキがよぉ! 四肢のひとつと言わず全部切り取ってやるよ! ここがギルドの中だったことに感謝するこった! 回復師も揃ってるからギリギリ死なずに済むだろうからな!」


 下劣としか言いようのない歓喜の爆発のさせ方を見せたゴーディーは、一分後──。



「な、なんで……?」



 僕の突き出したアオちゃん槍によって宣言通り、「秒」でKOされた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る