第33話 ステータス確認
冒険者ギルドの裏。
ぐるりと高い塀に囲まれたそこは地面から生えた打込み用の人形や弓矢や魔法の
「こんなとこがあったんだ」
「カイトも初めて来たの?」
「うん、僕はバッファーだからね。特に戦闘スキルを鍛えたりとかもしなかったし。ダンスキーたちなら来てたんじゃないかな」
ダンスキー。
僕を追放し魔薬に手を染めた挙げ句、リュウくんたちに手を出して僕たちに捕らえられ、今はギルドで調査(拷問っぽい?)を受けてる元パーティーメンバー。
一瞬頭に浮かんだダンスキーを頭から振りはらう。
今は目の前の敵。ゴーディーたちに集中。
「大丈夫、行こう」
一歩足を踏み出す。
ザッ……。修練場の砂はこれまでたくさんの汗や血を吸ってきたからか、とても重く感じられる。
ザバッ! ゴーディーの蹴り上げた砂が僕らに降り注ぐ。
「ギャ~ハッハッ! ビビってんなら今のうちにごめんなさいしとけやクソガキぃ~! このまま始まったらテメェ~らみんな俺様の『双鎌』にミンチにされちまうんだからよぅ!」
「
ラクの唱えた風魔法によって巻き上げられた砂埃は逆にゴーディーたちの方に降り注ぐ。
「
今度はダクロスの土魔法で作られた巨大な土の傘によってその砂塵は防がれる。
「おお~~~~!」
野次馬冒険者たちの感嘆の声。
「互いに無詠唱かよ!」
「てかゴーディーの姿、あれ……」
「獣人じゃねぇか!」
「マジかよ、さんざん獣系の魔物殺してきただろあいつ……」
「このギルドに獣人がいないのも、あいつがイビるからなんだよな」
「てかゴーディーのけもの姿、微妙にかわいくね?」
「るせぇぞテメエら! 先に切り刻まれたいのか!」
ゴーディーが両手の鎌で威嚇する。
「……」
普段のゴーディーを知ってるからか冒険者たちは押し黙る。
「こほん」メラさんが僕たちの間に入ってくる。
「はいはい、
「……チッ、よろしいぜ」
「はい、いいです」
「まずひとつ。互いの命は奪わないこと。ふたつ。一人でも四肢のひとつが欠けたら敗北。みっつ。戦闘不能とみなされた場合、もしくはギブアップでも敗北。よっつ。当事者たち以外に手を出さない。いつつ。冒険者としての誇りをもって仕合う。以上が
「ああ、要するに腕か足をもぎゃいいんだろ? 楽勝だぜ」
「ギブアップさせる。そしてラクの大切なネックレスを燃やしたことを謝ってもらう」
「ぎゃはは! 泣いて命乞いしてるのは貴様のほうだろうがな!」
「
「あるわけねぇだろ。こんなガキども何十人いようが関係ねぇよ。要するに一人の手足をもぎゃ~それで終わりだ」
「メラさん、僕一人で戦っちゃだめですか?」
手足をもぐ。
出来るんだろう、かまいたちなら。
目の前のゴーディーの両の手の鋭い刃は、ややもすると僕の心を折りそうになる。
万が一、ハルやラクに危害が及んだら……。
「残念だけど出来ないわ。
「やります!」ハル。
「ゆ! アオも戦うゆ!」アオちゃん。
「私のために戦ってくれてるのに私が参加しないわけにはいかんにょ!」ラク。
「……いいの?」
「いいに決まってるじゃない! 私の大好きな尊敬するカイトが負けるはずないって!」
「ゆ!」
「このままじゃリュウたちに会わせる顔がないにょ!」
「……みんなのことは僕が守るから」
「お~、思い上がった馬鹿女に雑魚スライムに雑魚獣人がよぉ~。どれから腕をもいでやろうかな~? それとも脚のほうがいいか? ぎゅひゅひゅ……」
腐臭漂うよだれを垂らすゴーディーにダクロスがだるそうに声をかける。
「私はリスク負いたくないからね~。後ろのほ~にいるからあんた勝手にやって。なんかさっきから体も重いし、あいつらも得体がしれないし。スライムをテイムしてるからテイマーなんだろうけど、あっちのたぬきはそこそこやりそうよ?」
「あ? じゃあテメーは俺のケツに隠れてあのたぬき押さえとけ。あとは俺が勝手にやっからよ」
「はいはい、よろしく~。てかマジであんたの獣人姿引くわ……」
「るせぇ! 獣人だろうがなんだろうが俺とお前のGDペアは最強だろうが!」
「ま、ね。あんたもそれ、隠してた力なわけでしょ? さっさと終わらせて迷宮の記録も塗り替えよ?」
「あぁ、心配すんな。秒だ」
秒、ね。
こっちも長引かせるつもりはない。
ステータス差を活かして一気に制圧する。
「では、両パーティーとも
この間に作戦を練る。
その前に──。
ハル、アオちゃん、ラクと目で会話。
うん、わかってる。
じゃあ、
『
ジュゥゥゥン──。
僕は立て続けに三人のステータスを動かしていく。
今回はアオちゃんはついてきてないみたい。
まずはハルから。
名前 ハル・ミドルズ
称号 幸せな捜索者
種族 人間
性別 女
年齢 16
LV 2
HP 1
SP 2
STR 4
DEX 6
VIT 3
AGI 11
MND 4
LUK 109
CRI 38
CHA 7
ステータスは最初見た時のまま。
あれからまだゴブリン一匹しか倒してないもんね。
称号が『村娘』から『幸せな探索者』に変わってる。
両親を捜してるから探索者?
なんにしろ幸せを感じてくれてるっぽくて嬉しい。
さて、それはそれとして。
CRI(会心率)を「109」から「901」に。
LUK(幸運値)を「38」から「83」に。
いつものように入れ替え。
ハルはとにかく全般的にステータスが低い。
だからアオちゃんに守ってもらおう。
ってことで、次はアオちゃん。
名前 アオ
称号 鍵
種族 スライム
性別 雌雄同体
年齢 19
LV 202
HP 543
SP 225
STR 223
DEX 44
VIT 90
AGI 21
MND 7
LUK 100
CRI 89
CHA 101
前回は空欄だった名前欄に『アオ』と記されてる。
称号……『鍵』?
隠れ家へと続く鍵の役目をしたからかな?
悪魔を倒したからかレベルが一つ上がってる。
にしても相変わらず凄いステータス……。
もしかしたら本物の世界最強はアオちゃんなんじゃないか?
なんて思いつつ、さらに最強にステータスを入れ替えていく。
SPを「225」から「522」に。
STR(力)を「223」から「322」に。
CRI(会心率)を「89」から「98」に。
CHA(魅力)を「101」から「110」に。
いや、ほんと強いな……。
そりゃ悪魔も倒せるってなもんよ。
でも、それだけに安心してハルを任せられる。
頼んだぞ、アオちゃん。
よし、次だ。
名前 ラク・ブレロ
称号 保護たぬき
種族 たぬき獣人
性別 女
年齢 15
LV 17
HP 18
SP 29
STR 7
DEX 34
VIT 16
AGI 12
MND 49
LUK 4
CRI 2
CHA 6
称号『保護たぬき』。
たしか前は『迷いたぬき』。
天才は間違いなく天才のステータス。
けど、アオちゃんのまるで魔王ばりのステータスを見たあとだと物足りなく感じる。
ラクは僕が守ってあげるとしよう。
その前に。
ゴゴゴゴゴ……。
HPを「18」から「81」に。
SPを「29」から「92」に。
DEX(器用さ)を「34」から「43」に。
VIT(頑丈さ)を「16」から「61」に。
AGI(素早さ)を「12」から「21」に。
MND(魔力)を「49」から「94」に。
あれ、丈夫さもHPもかなり上がったな。
それにSPと魔力も。
え、これ万能では?
もしかして僕のおもり必要なさそうな感じ?
ま……まぁ一応僕のステータスも見てみてから考えるとしようかな……。
名前 カイト・パンター
称号 中級調律者
種族 人間
性別 男
年齢 16
LV 17
HP 32
SP 41
STR 29
DEX 22
VIT 35
AGI 28
MND 49
LUK 2
CRI 2
CHA 13
称号『中級調律者』!?
調律者って!?
しかも初級を飛び越していきなり中級!?
ミノタウロスと悪魔を倒したからレベルもかなり上がってる。
前「8」だったのが「17」に。
それにつれてステータスにも変化が。
諸々上がってるけど、一番の変化は「CHA(魅力)」!
前は「1」だったのが「13」に!
これはレベルが上ったから?
それともハルとキスしたから?
ずっと「1」だったLUKとCRIが「2」に増えてるのも地味に嬉しい。
一生「1」のままだと思ってたよ。
さてさて、感慨に浸るのもそこそこにして……。
STR(力)を「29」から「92」に。
VIT(頑丈さ)を「35」から「53」に。
AGI(素早さ)を「28」から「82」に。
MND(魔力)を「49」から「94」に。
CHA(魅力)を「13」から「31」に。
それぞれ動かした。
力と素早さがかなり高くなった。
これで肉弾戦でも立ち向かえるはずだ。
あとは、みんなと打ち合わせだな。
こうして現実世界に戻った僕は、それぞれ上げた項目をみんなに伝え大まかな作戦を立てて──。
「三、二、一……
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