第2話 ステータスを動かそう

 僕はいま数字の「3」の上に立っている。


 あたりは真っ暗、地面も真っ黒。

 四方を真っ白な壁に覆われている。

 で、僕は真っ白な立体数字の上に起立。

 巨大迷路の壁の上に立ってるって言えばわかりやすいかな?


 で、この文字と数字はなにかというと。


 じゃじゃ~ん!


 僕のステータスなので~す!


 ということでさっそく自分のステータスを確認~。


 うぃ~っとつま先立ちして足元に広がる文字を確認していく。



 名前 カイト・パンター

 称号 バランス調整<不幸>

 種族 人間

 性別 男

 年齢 16

 LV 8

 HP 14

 SP 21

 STR 13

 DEX 12

 VIT 16

 AGI 14

 MND 23

 LUK 1

 CRI 1

 CHA 1



 うんうん、今までと変わりないね。

 魔力が高めの駆け出し冒険者。

 非力な僕にしては頑張ってレベル上げたほう。

 とりあえず大体のステータスを二桁まで上げられたのでヨシなのだ。

 なぜ二桁かって言うと……あ、これはあとで言うね。


 で、相変わらずの称号。


『バランス調整<不幸>』


 う~ん、もしかして僕が追放されたのもこの称号が関係あったりするんだろうか……。

 なんてったってLUK(運)、CRI(会心率)、CHA(カリスマ)がぜ~んぶ「1」だもん。

 う〜……魅力も運もない非力マン……。

 そりゃ見放されもするかも。

 っていうかなんだよ『バランス調整<不幸>』って。

 こっちは別に調整されるほどの恩恵を受けたおぼえはないんだけど?


 まぁ愚痴言っててもしょうがない。


 それより自己バフ。


 僕はぴょんと「3」から飛び降りると、でっかい立体数字をズズズ……と押して場所を入れ替えていく。


 ズズ……。


 ズズズ……。


 そう、僕のバフは……。


 肉体労働〜〜〜!


 ハァハァ……。


 で、出来た……!



 名前 カイト・パンター

 称号 バランス調整<不幸>

 種族 人間

 性別 男

 年齢 16

 LV 8

 HP 41

 SP 21

 STR 31

 DEX 21

 VIT 61

 AGI 41

 MND 32

 LUK 1

 CRI 1

 CHA 1



 HP、STR、DEX、VIT、AGI、MNDが元の数倍に上がっている。


 このためにステータスが二桁必要だったのだ!

 一の位と十の位を入れ替えたってわけね!

 これがボクのバフ魔法だ(めっちゃ疲れる)!


 ふぅ……。


 額の汗をぬぐう。

 自分のステータスを動かす時だけはかなり力使うんだよね。

 他の人はそうでもないのに。

 なぜ? ホワイ? そういうもの?

 だから僕は普段自分を強化しない。

 疲れるしSP(スキルポイント)の消費も激しいから。

 だけど今は緊急事態。

 そうも言ってられません。


(う~ん、キマイラも弱体化させたほうがいいかな?)


 でもSPも有限だしなぁ。

 このあと僕は一人で地上まで戻らなきゃいけないし。

 なるべくSPは温存しておきたい。


 ま、たぶん大丈夫でしょ。

 VIT(頑丈さ)も「61」あるし。

 これはあの頑丈な盾職ゴンダラの倍の値だからね。

 多少攻撃を受けたとしても大丈夫……なはず!

 たぶん。


 ってことで。


「よし、解除だ!」


 シュゥゥ──ン。


 ステータス欄が起き上がって平面になり、僕の体を後ろから前へと通り過ぎていく。


 そして。


 戻った。


 現実!


 モノクロだった世界に色が芽生えていく。


 急げ、動け、僕!


「ふんっ!」


 ブチッ!


 力を入れて、手を縛っていた縄を引きちぎる。


(よし、さすがSTR「31」! あいつらが僕が非力だと侮ってこの程度で済ませてくれてて助かった!)


 叫び声を上げながら飛びかかってくるキマイラの爪の一撃をひらりと躱すと、僕はそのまま尻尾の蛇を足で踏みつけてキマイラの腹に一撃! ズドンッ──!


「ギャッ──!」


 完全な不意打ちなのにクリティカル感が出ないのはCRI(会心率)が「1」だから。


 それでも相当効いたみたい。

 キマイラは及び腰でキュルキュル唸ってる。


(HPも温存しときたい。ここは軽く──)


 シュシュシュッ──!


 AGI(素早さ)「41」のフットワークでキマイラとの距離を一気に詰め、ドドドッと拳を三発同時に打ち込む。手応えあり。VIT(頑丈さ)が高いので拳も傷まない。


「ミ、ミャ~……!」


 鼻っ面を殴られたキマイラは猫みたいな声を上げると奥へと引き返していった。


「ふぅ、撃退成功っと!」


 あとはこのダンジョンから脱出するだけ。


 一人でこの二十二階から上がりきるのは大変だけど、素早さも頑丈さも高いから最悪ひたすらダッシュで行けばイケるはず。というかイケてくれなきゃ困る。


 僕はダンスキーたちに踏みにじられたボロボロのかばんを拾うと、地上に戻るべく上り階段の方へと向かい歩きはじめた。

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