Special.02 -バカップルで親バカ-

「いや~…ほんと、変わってないね、瀬戸くんはさ」

「そういう佐藤さんだって」

「私、もう佐藤じゃなくて井之上いのかみになったんだよね。って、これももう5年くらい前の話だけど。いつになったら井之上さんって呼んでくれるの?」

「無理だって、もう佐藤さんで呼び慣れてるから」

 この人は佐藤由希。高校時代からの親友だ。…今は井之上由希だけど。

「そういえば、あまっちもカレと良い感じらしいよ。結婚まであと一歩だって」

「そうなんだ」

「瀬戸くんに失恋してへこたれてた時期が懐かしいよね~」

「こ~ら、まだ引き摺ってるんだからその話は止めて」

 そう言いながら、手が伸びてきて佐藤さんの頭に軽くチョップを食らわせる。

 佐藤さんから「痛っ」と声がでる。

 …なんか、懐かしいな。

「久しぶり、彼方くん」

「お久しぶりです。天笠先輩」

「…もう、その呼び方されたらまた…」

「これ以外に呼び慣れてないんですから、慣れてください」

「仕方ないなぁ…」

 そう言いながら、僕の隣に座ってくる天笠先輩。…本当に、こういう所はちゃっかりしてるんだよな。

「伶衣に見つかったら怒られますよ」

「あはは、大丈夫。…そういえば、璃奈ちゃんってもう10歳だっけ」

「そうですね。先月10歳になりました」

「可愛いんだよね、璃奈ちゃん。お持ち帰りしちゃいたい」

「…流石に、しないよね?」

 そう言いながら、少し佐藤さんを睨む。

「する訳ないってば。…バカップルに加えて親バカかぁ…本当、良い意味で変わらないよね、伶衣ちゃんも瀬戸くんもさ」

「そう?」

「「そうそう」」

 そんな感じで話していると、不意に肩を叩かれる。

「来たよ、旦那様♡」

「…普段そんな呼び方しないでしょ…」

「まあまあ、家で璃奈が待ってるから、早く帰ろ?」

「もうそんな時間なんだ。…じゃあ、二人ともまたね」

「うん。またね彼方くん」

「またね~」

 そう言って、僕と伶衣は喫茶店を後にする。

 注文した分のお金はきっちりと佐藤さんに渡しておいたから問題無し。

「帰ろう帰ろう。璃奈が待ってる」

「あんまり早く歩かないでよ?…たまには、二人でゆっくり帰ろ…ね?」

「…うん。そうだね」

 そう言って、伶衣と手を繋いで、璃奈の待っている家へと、帰路を辿るのだった。


――――――――

作者's つぶやき:なんと佐藤さ…じゃなくて、井之上さんも結婚してるんですよね。…佐藤が旧姓になってなんだか寂しい気もします。

――――――――

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