ある老婆と、彼女の孫娘のお話

たんぜべ なた。

第1話 立夏

立夏リカ、私の祖母が付けてくれた名前。

萌黄色が眩しく、草木もかぐわしく、鳥達のさえずる声も賑やかな、躍動の季節。

そんな生命に満ち溢れた季節の名前が立夏…私のお気に入りの名前。


そして、パーソナルカラーはカナリーイエローくすんだ黄色

見劣りする黄色、日の沈んだ後のヒマワリの花、降り注ぐ銀杏いちょうの黄色い葉…何か物足りないこの色は、私の好みに合っていない。

でも、この色を決めたのは私の祖母。

目の前で、ベッドに横たわり静かに私を見つめる女性。


「おばあちゃん、良いもの持ってきたよ。」

そう言って、私は銀杏いちょうの黄色い葉を見せる。

窓から差し込む光を透過して、黄金色に輝く銀杏いちょうの黄色い葉。


「まあまあ、綺麗なヒマワリだね。

黄色く輝いて、とっても綺麗。」

おばあちゃんは感極まったのか、大粒の涙を零しながら微笑んでいる。

「そうだよ、ヒマワリが沢山咲いているのよ。」

思わず、祖母と話しを合わせてしまった。


外は立冬。

ここは季節を忘れた病室の一区画。

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