第12話 すだちが左脚を引きずっている原因が判明する
レントゲン室に連れていかれるすだち。
そして、しばらくすると
「きゅおおおおん!」
と、甲高い鳴き声が中から響きました。
初めて聞くすだちの声。
私があまりに驚いた顔をしていたからか、助手さんが説明してくれます。
「X線を撮るときに動かないように、そして、縮まった足の骨も写すために、牽引するから、どうしても患畜は痛がるんですよ」
助手さんは、誤解していたようですが、それはマロンで経験済みだったのでさほどでもありません。私が驚いたのは、すだちがちゃんと鳴けた、という事実にでした。
あ……鳴けたんだ。声帯、切られてなかったんだ!
良かったあ、と思いました。
これで声帯まで切られていたら不憫すぎます。
レントゲンの後、血液検査と便の検査(注射はともかく、棒を肛門に突っ込まれているのに鳴かないし、あばれもしない、すだちは良い子だなあ……と思いました)をした後、あっさりとすだちは解放され、私は待合室ですだちを抱っこしながら、結果がでるのを待ちました。
待っている間もどんどん犬や猫が診察室に吸い込まれていきます。
名物熱血先生なので時に怒鳴り声も響きます。
うっすら涙しながら診察室から出てくる飼い主さんもいて……いい病院だから、これで、くじけず通い続けて欲しい、と思いもしました。
20分ぐらいして呼ばれたので、診察室に入りました。すだちはぷるぷる震えています。
「左脚を引きずっている原因がわかったよ」
先生はレントゲンを見せながら説明してくれました。
「過去にこの仔、骨折しているよ。大腿骨頭ね。治療されないで放置されて、それでそのまま変な風に、骨がくっついちまったんだな。多分、今も歩くたびに痛むはずだよ。ひどいよなあ、本当」
私が絶句していると先生が続けます。
「大丈夫だよ。手術で綺麗に直してやるよ。リハビリは必要だけれどな。やるよな?」
「もちろんです!」
私は頷きました。
「じゃあ、手術日を決めるか」
「あ、すみません。この仔、避妊手術が済んでいないので、一緒に手術はできますか? あと、同時に、歯石も取ってもらいたくて……麻酔の回数があまり多くないほうがいいと思うので……」
「確かにすごい歯石だからな。まあ避妊手術はもう子供を産める年じゃないだろうし、いらないと俺は思うけれど、あなたが必要だと思うならするよ。糸が残らない手術法でね」
任せな、と先生は言いました。
「ちゃんと、治ったら沢山運動させて筋肉つけて、かわいがってやんなよ」
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