第10話 市場を独占しようぜ!

 「まじよっちゃん!? 聞こえるのモンスターの声が!?」

 「聞こえるけど...え、逆にみんなは聞こえないの!?」

 「聞こえないよ『亜人系』みたいな人語がしゃべれるならまだしも」

 「ま、まじで? 死にすぎて頭おかしくなったとか?」

 「死にすぎたどうかは知らないが、お前のそれは『魔物声感[まものせいかん]』て言うやつだな」

 「え...そんなのあるの!?」

 「生まれ時からある先天性もあれば訓練とかモンスターと過ごしているとわかる後天性のものがあるからな」


 あ、意外と珍しいものじゃないんだ。


 「ピコーン! 良いこと思い付いた!」


 ミユはそういうとおもむろにバッグを漁り始めた...なんか嫌な予感がする。


 「よっちゃん、よっちゃん、ちょっとあのデビルベアーさんを呼んでくれない?」

 「え!? 呼ぶってあいつを!?」

 「いやなんか戦ってる時、何気に会話していたっぽいし、それぐらいできるっしょ?」

 「いや無理でしょw 呼んでも絶対に言う事聞くわけないじゃんw」


 しばらくして...


 『ア ナンデショウカ?』


 来たよこいつ...何の疑いもなく来ちゃったよ...


 「うお...まじで来たよ」


 ほらミユも想像してなかったじゃん、ユウキとユメ警戒してるし。


 「ねぇゆうちゃん、デビルベアーさんは私の言葉はわかるの?」

 「そうだな、何でかは知らんがモンスターは人間の言葉は理解出来ているところがあるからな、現にこいつら会話してるし」


 私は聞こえるから気にしてなかったけど、人間の言葉をしゃべってる訳でも無いモンスターが理解してるなんて不思議なものだ。


 「それなら良いよ、いちいちよっちゃんに伝えてもらわなくて済むわけだし」

 「え、私が通訳する感じなの?」

 「当たり前じゃん! 今からデビルベアーさんと交渉するんだから」


 え、交渉? 交渉って言った?


 「その前に1つ、デビルベアーさんに献上したい物がありましてw」


 するとミユは懐から銀色の袋のような物をとりだしデビルベアーの前に出した。


 『ナニ コレ?』


 その袋には『レトルトカレー』と書かれていた。


 「これはレトルトカレーと言って私達がよく食べ物なんだ」

 『タベモノ? コレ ウマイノカ?』

 「え? うんまぁおいしいけど...食べてみる?」


 そう訪ねるとデビルベアーは『ウン』と頷いた。

 私が言うのもなんだけど疑えよ少し

 私はレトルトカレーの袋を開け、お皿にご飯をのせカレーをかけてデビルベアーに渡した。

 デビルベアーはまず匂いを嗅ぎ舌を出して舐めた。

 舐めた瞬間、まるで丸1日何も食べてなかった奴のようにがっつきはじめ米1粒残さないようにペロペロと舐め完食した。


 『ウマイ コレ モット クイタイ』

 「ふっふっふー、そのガッツキ様...通訳しなくてもわかる...もっと欲しいでしょ?」

 『ホシイ ホシイ ホシイ』


 デビルベアーは取り憑かれたように連合した。

 みんなにはわからないだろうがなかなかの江面である。


 「そこで、デビルベアーさんにはやっていただきたい事がありまして__」


 ミユはデビルベアーにYポイント制度の事を話した。

 ミユが提案したのは私達と動画制作の協力したらポイントを貰い、そのポイントでこちらの世界にある食べ物等と交換すると言う仕組みである。


 「ていう感じなんだけどどうかな?」

 『イイヨ』

 「いいの!?」

 「よっしゃ! 交渉成立! じゃあ早速撮影の続きをしようぜ!」


 ミユはカメラを取り出しそう言うとデビルベアーはやる気に満ち溢れたのか咆哮を上げた。


 「これで更に注目を浴びてガッポガッポになる! ワッハハハハッ」


 あ、あれ...もしかしてさっきまで以上に無惨に殺されるのでは?

__________________


 あれから月日が流れ...


 ミユの思惑通り私達のダンジョンは更に注目を浴び客もどんどん増えた。

 多くの人は『バズりたい』や『モンスターを討伐したい』が多い...だけど最近はこんな客も増え出した。


 「ねぇこの大量に箱に入ったポーションどうする?」


 「ん? それ○○会社に納品する奴だよ」

 「ふーん...えっ○○会社ってあの大手企業の!?」


 ビッグネームが出た事に驚いていると続いて他の企業名を出し、頭が困惑していった。


 「ちょ、ちょっと待って待って! もしかしてそれ全部納品するの!?」

 「ヤシロさんの売り込みの賜物だよ」


 た、確かに凄いけど...でもこのままだと。


 「でもそんなに納品したら在庫とかの心配はしなくて大丈夫なの?」

 「ワッハハハ!何を心配する必要があるんだい? よっちゃんのダンジョンは腐るほど資源が豊富じゃないか!」

 「いや、確かにそうだけど...でもポーション作りとかの人手が足りないんじゃ?」


 そう訪ねるとミユは不適に笑い「どうやってポーション作りしているのか教えてあげるよ」と言い案内された。

 案内されたのはダンジョン内でダンジョンボスがいる方向と少しズレた場所に行き、するとそこには『ゴブリン』等がいてそのゴブリン達がポーション等を調合していた。


 「オラ! ドンドン ツクレ! ツクッテ オヤカタサマ ニ ケンジョウ シテ ウマイモン モラウンダカラナ!」


 ゴブリンのリーダーらしき者がそう言い、ゴブリン達はせっせと働いていた。


 「え...何あれ? 何でゴブリン達がポーション作ってるの?」

 「ゴブリンは『亜人系』だから交渉しやすかったんだよ」

 「交渉したってもしかしてYポイント制の?」

 「そうそう、ちなみにあいつらが言ってる『オヤカタサマ』ってよっちゃんの事だから」

 「えぇ!? 私なの!?」

 「当たり前じゃんw よっちゃんは社長なんだから」

 「な、なんかとんでも無い事になってない!?」

 「良いことじゃん、人件費は高くないし多く雇える。素材は冒険者が集めてくれる。そして出来上がったポーションを市場に売り独占する! 最高の流れじゃないか!」


 う、うわー...まさかダンジョン1つでこんな事になるなんて想像つかなかったよ...


 「まぁでも、この経営はダンジョンボスが殺られたら破綻しちゃうから諸刃の剣なんだけどねw」


 なんかさらっと恐ろしい事言わなかったかこいつ!?

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