第7話 え? いつの間にか再生数伸びてるんだけど?

 一週間後...


 「つ、疲れた...」


 まさか一週間も訳のわからない植物を食わされては死んでは蘇らせて、死んでは蘇らせてはの繰り返しをした。

 加えてミユに「どんな感じ? 痛い系? 苦しい系?」等と症状を聞かれたりした...本当にこいつはサイコパスだろ。

 

 やっと帰る事ができると安心してダンジョンから抜けると自身の部屋だったものが全く別のものにかわり私は驚愕した。

 洞穴のような見た目に灯りには松明を使われていており、まさしくダンジョン入り口前の雰囲気が醸し出していた。

 1週間でここまで出来るものだろうか...

 私達が帰ってきた事に気がついたヤシロは部屋の奥から顔を出してきて手を振った。


 「流石はやっさん♪ あ、これ今回取れた動画とよっちゃんを犠牲で得た薬草とかの情報だよ」


 ミユはヤシロにカメラと何十枚も束になった紙を渡した。

 犠牲とはなんだ犠牲とは!


 「そういや動画の伸びはどんな感じ?」


 ミユがそう訪ねるとヤシロは親指をグッと立て投稿した動画を見せた。

 動画が再生されると私がマンイーターに襲われる数秒前から始まり[1コメ][うぽつ][wktk]等と言ったコメントが画面の左から流れ始めた。

__________________


: wwwwwwww


: 早速死んでて草


: まじで打ち切りw


: ダンジョンに入って3秒で即死


: グロ過ぎる


: モザイク越しでもわかるグロさ


: マンイーターヤバすぎw


: ここどこのダンジョン?


: 斧の子、強くね?


: ↑それよりも弓の子が凄いだろjk


: ↑それな


: マンイーターごときに苦戦とか雑魚乙 


: そこら辺の草食わせて草生えるw


: ↑草に草生やすなw


: 復活してて草


: !?


: ファッ!?


: 適当に食わせたやつがたまたま薬草でラッキーすぐるw


: いや...あれどう考えても即死だろ、薬草では治せるわけねぇ


 『しかも今回ので思いもしなかった収穫も得た訳なんだしラッキーじゃん♪』


: ん? これ世界樹の葉じゃね?


: おいおいおい そこら辺に生えてるの世界樹かよ!?


: まじぃ? 行ってみた~い


: 嘘乙


: 俺見たことあるから言うけど仕込みとかじゃなくてまじで世界樹が生えてる


: ↑ま?


: んな訳無いだろw

__________________


 「一、十、百...十万再生!?」


 [やらせ]とか[加工だろ]等のアンチコメントが多いが、再生数がある事に私は驚いた。


 「ぐへへ 思ってた通りだぜ...死亡系のジャンルはめっちゃくちゃ人気だから伸びると思ったぜ...しかもそこら辺に生えてた葉を食べさせたら復活して世界樹の葉でした何て言うあり得ない事が起き、賛否両論で更に注目を浴びるッ よし! この流れで今回の動画も投稿だ!」


 ミユはそう言うとヤシロは敬礼して直ぐさま動画編集に取り掛かった。


 しばらくして...


 [【初心者必須!】森林ダンジョンの攻略の仕方 薬草と毒草の見分け方w]


 またしても短期間で編集を終えたヤシロは投稿した。

 前回の動画である程度注目を浴びていたためか動画の再生数は直ぐに伸び初めコメントも付きはじめた。

__________________


: タイトルからして不安要素しかないw


 『お金が無くて薬草とかポーションをケチってしまう時あるよね?』


: ケチるw


: わかる


: まじでそんな時に限って怪我してしまうw


: そんな装備で大丈夫か?


: 大丈夫じゃない 問題だ


: 一番良いポーションを頼む


 『ステップ1 薬草ぽい物を探そう!』


: ま、まともだ...


: あ、そこは普通に図鑑とかで調べるんだ...


: ぐへへ...俺のマンドレイクを引っこヌいて見ないかい?


:↑キッショッ


 『ここでポイントとして引き抜いた際にもし手が荒れたり爛れたりしたらほぼ毒だから、止めておこう』


: おい、こらw


: 先に言えw


: もう手遅れw


: 毒「もう逃げられないぞ♡」


 『ステップ3 皮膚に触れさせよう!』


:まさかの原始的のやり方w


:確かに簡単にわかるがw


 『か、痒い...なんか痒くなってきた!?』


:毒確


:こいつぁ黒...ですな


: うっわ...手が爛れてる


 『ステップ4 口に含んでみよう!』


: ここまでまだまとも


: まだだ...まだ何かあるはずだッ


: ん? それ毒だったやつじゃ...


: 爛れたやつを口に入れるとか正気じゃね


 『か、辛ッ!? いや違うッ...これは痛い! 口の中がチクチクして痛いッ! めっちゃ痛いッ!』


: 知ってた


: 身体はりスギィ!


:もう胡散臭い


 『ステップ5 飲み込んでみよう!』


: ファッ!?


: お、おい...冗談だろ


: どうせ編集で、すり替えてるだろ


 『傷を瞬時に治す為の不可抗力とかなんとか』


: んな訳あるか!


: このスタッフサイコすぎるw


: 信じてんじゃねーよw


: 食え...食え...


: え、まじで飲み込もうとしてる?


: やめろぉぉぉぉ!!


: やるんだな...今ここでッ!


: や、やりやがったコイツッ!? まじで食いやがった!?


:不自然なラグがあるな、中身すり替えてるの確定


: なんか顔色悪くない?


: 幻覚見えてて草


:泡吹いて倒れたw


: え...これガチのやつ?


 『ステップ6 毒だった場合の対象方』


: こっからどうするんだ?


: いや、もうこれ助からないだろ


 『腹にめがけておもいっきりぶん殴っちゃって☆』


: 荒療治スギィ!?


: ネタだとわかっているがジャージの子可哀想すぎ


: ゲロ助かる


: そのゲロいくらで買い取れますか?


: ↑おまいらw


 『しかし、ソロだったり毒が全身に回った場合は助かる見込みはありません...ご冥福を祈りましょう』


: 人


: 人


: 結局死んでて草


: 見分けれてねぇじゃんw


: ダンジョン初心者だったので大変勉強になりました! 参考にさせていただきます!


: ↑ひょっとしてそれはギャグで言ってるのか?

__________________


 「す、すげぇ...投稿したばっかりなのに一万回再生数もある」

 「いやぁ正直私も驚いたよ...3、4本ぐらい投稿しないとバズらないと思ってたけど、これは...」


 するとミユは徐に携帯をいじりだした。


 「...やっぱり既に他の動画サイトに無断でアップロードしている奴らがいるね」

 「無断で!? それって直ぐに消さないと不都合なんじゃ?」

 「確かに無断でアップした奴は動画が伸びれば収益を得てうはうはで私らには何のメリットも無い...しかも違法だと判明しても本来の動画主では無いから咎められても『違法動画だったなんて知らなかった』とか言って罪は軽いだろうし」


 何よそれ、私達がせっかく苦労して作った動画を利用されるとか...


 「納得出来ないんだけど! 通報した方がいいんじゃん!」

 「通報した所で新しいアカウントを作ってまたアップロードするに決まってりじゃん、しかも違法ダンジョン経営している私らが通報なんかしたら捕まる恐れがあるからやらない方が良いよ」

 「じゃ、じゃあ何もしないで指を咥えて見てるしかできないの!? 損するだけじゃん!」


 不満気にしている私達を見てミユは不適に笑った。


 「これが損じゃないんだなw むしろ超得するんだよね」


 私は「どう言う事?」と訪ねると「まず、ヤミチューブの強みを教えよう」と言い出し私達はキョトンとした。


 「ヤミチューブは他のサイトと同じように収益は出るけど他のと比べて利益が取られるんだよね。どうしてかというと、もし私らのダンジョンが違法てバレても私ら売る事は決して無い! そんな事したらサイトの利用者が減って大損害だからね」

 「それの何処が得する事に繋がるの?」

 「単刀直入に言うと無断アップした奴のアカウントを乗っ取とります」


 するとミユは手をたたくとヤシロはおもむろにパソコンを取り出し何か作業を始めた。


 「乗っとるって...そんな事したら私らの方こそ通報されるんじゃ」

 「通報されてもアカウントが消えるだけで私らを咎める手段なんて無いよw アカウント事態の情報はアップした奴のだし、逆に通報なんかしてみたら損するのはそいつだけで何にも出来やしねぇよ!」


 ミユは「ワッハハハハ」とお声で笑った。

 悪だ...こいつは根っからの悪魔だ!


 「因果応報ってやつだよ!アカウントを利用してバズりにハズって宣伝をしまくって、収益は私らの口座に振り込めるようにしてガッポ! ガッポ! ああご安心をこちらの口座は架空のため身バレの心配もございません!」


 何処でそんな物を手に入れたんだよ...とツッコミを入れようと思ったがなんとなくだがやめた。


 「ねぇ...私ダンジョン配信の収益とかよく知らないから聞くけど、どんだけ儲かるの?」

 「人それぞれだが、こんなにも再生が伸びてるてなると、生活は安定するだろうな」

 「まじ!? じゃあこのまま配信し続けるだけで良いって事じゃん」

 「はぁ? 何言ってるよっちゃん この程度で満足してるとか夢無さすぎでしょw」

 「え...でも安定するのは良い事じゃん」


 そう言うとミユは「これだからよっちゃんは」とため息をつかれた。

 私は何も間違った事は言ってないと思うんだけど。


 「そもそもだよ! ダンジョン企業の醍醐味である冒険者を呼ぶというのをまだやって無いんだよ!」


 そう言えばそんな事をするって言ってたけど...


 「冒険者を呼ぶって言うけどそれこそ身バレとかしないの?」

 「そこんとこは色々と考えてるからご心配なさらず、そんな事よりまず、どういった客を呼びこm」


 ミユが話をしている最中、ヤシロがミユに1枚の紙を渡した。

 渡された紙をミユは目を通した。するとミユは口元がにやついた。


 「お、おい...まじかよやっさん...仕事早すぎない?」


 ミユがそう言うとヤシロはどや顔をした。


 「どうしたの、それに何が書いてる?」


 そう尋ねるとミユは不適に笑い目をギラギラとさせた。


 「ご予約様1名入りましたぁ!!」

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