第36話 成長の軌跡
私とエリック王子の結婚に関する話は、成立せずに終わった。
聖女の力でエリック王子の記憶を元通りにして、私に対する本当の感情を思い出してもらった。
あの時、大勢の目の前で婚約破棄を告げるほど私を嫌っていたのだから、おそらく彼も私と結婚したいなんて気持ちは消え失せたことでしょう。
「これで協会の運営に専念できますね」
「ええ、そのつもりよ」
ジャメルは相変わらず、とても仕事ができる人だ。彼がいなければ、ここまで協会が成長することはなかったと思う。
「ジャメル、これからも協会をよろしくね。あなたの力が必要なの」
「はい、ノエラ様。私に任せてください」
そして今後も、彼の活躍によって協会はさらに大きくなっていくでしょう。本当に頼もしい存在だと、私は心から感謝している。
エミリーやナディーヌもやる気に満ちている。協会で色々な経験を積み、ずいぶんと成長した。
「ノエラ様、次の依頼ですが、私たちで引き受けてもいいですか?」
「ええ、もちろん。あなた達なら心配ないわ。頑張ってね」
「では、いってきます」
もう、私の心強い味方だ。
商人のアンクティワンは、いつの間にか王都を代表するような大商人になっていた。
「ノエラ様、今度新しい港が開かれるそうです。良い商機になりそうですよ」
「それは良かった。これからも情報をよろしくね」
「はい、もちろんです!」
商人としてここまで大きくなれたのは私のおかげだと、とても感謝された。だが、私のほうが彼に助けられた機会の方が多い。とても感謝している。だから私たちは、お互いに尊重しあえる関係を続けられていた。今後も、彼との付き合いは大事にしていかないといけない。
協会は、王都での影響力を十分に広げることができた。だが、地方では今でも教会の方が影響力が大きいのが現状だった。
勢力拡大には、冒険者ギルドとの協力が欠かせない。私たちが冒険者として活動をしていた頃に築いた関係が、今も役立っている。彼らと協力して仕事をこなし、利益を上げていく計画を立てているところだ。
私には、まだまだやるべきことが山積み。一つ一つ着実にこなしていかないと。
そうして月日は流れ、エリック王子は王位を継承した。そして、教会の聖女であるエリーゼと結婚したのだ。ただ、その2人の関係は相変わらず悪いらしい。彼は記憶を取り戻したはずだけど。それなのに。
私の疑問に答えるジャメル。
「他に相手が居ないから、仕方なく一緒にいるんでしょうか」
「権力者の結婚は、なかなか大変そうね」
本当に大変そうだ。教会から離れて協会を立ち上げたという選択は、今も大正解だと思っている。
一方で、協会の躍進ぶりに危機感を覚えたのか、教会の人たちも大きな改革を行っているようだ。古い体質を改め、新しい教会へと変わろうとしている。
色々とあったけれど、彼らが良い方向へ変われることを私は心から願っている。そう思えるようになったのは、私自身も変われたからなのかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます