第33話 愚かな勘違い ※エリック王子視点
協会との交渉を任せていた部下からの報告を受けて、俺は満足げに頷いた。
「よくやった。協会を説得できたようだな」
「はい、エリック様。ですが、一つだけ注意点がございます」
部下が言葉を継いだ。
「正確には、まだ結婚が決まったわけではないのです。協会からルールの変更を提案されました」
「ルールの変更?」
「はい。結婚する意思があるかどうかを、お互い確認し合うことを求められました」
ほう、これは興味深い。奥ゆかしいところがあるじゃないか。つまりそれは、俺の結婚するかどうかの意思を確認したいということだろう。
彼女は今まで俺との接触を避けているように感じていた。交渉は部下のジャメルという老人に任せて、俺の目の前には出てこなかった。だが、どうやら違ったようだ。彼女は疑っていたんだな。俺が本気かどうか。愛する気持ちがあるかどうか。
これは、俺の彼女に対する態度をはっきりさせろ、ということか。
そういうことなら、喜んで応じようじゃないか。
強引に結婚を決めるのではなく、彼女の意思を尊重する姿勢も見せれば、好感度も上がるだろう。
協会のトップを聖女と認めて、結婚する。それはつまり、協会の力を手に入れたも同然ということ。これから王になる俺にとって、頼りになってくれる。
俺は機嫌よく、部下の男に伝えた。
「よくやった。今回の話し合いを成功させたお前を、褒めてやろう」
「あ、ありがとうございます!」
その部下は恐縮しながらも、嬉しそうに頭を下げる。これまで何度も交渉で失敗を繰り返してきた。だが、ちゃんと成功したら褒めてやる。
「お前は今まで、あまり成果を出せていなかったな。だが、今回はしっかりと働いてくれた。これからも、その調子でやってくれ」
「はい、かしこまりました」
「だが、これで気を抜くなよ。最後まで気を引き締めて、俺のためにしっかり働いてくれ」
「ええ、もちろんです。エリック様のために、全力を尽くします」
忠誠心の高さが伺える返事に、俺は小さくニヤリと笑った。
「報告は終わりだな? それじゃあ、下がっていいぞ」
「はっ、失礼します」
一礼して、部下は部屋を後にした。
俺は、窓の外を眺めながら考え込んだ。兎にも角にも、ノエラの意思を確認すればいいんだな。
それなら、早いうちに協会のトップである彼女を呼び出そうじゃないか。
直接会って、互いの気持ちを確かめ合う。
私は期待に胸を膨らませながら、次の段階に進むことを決意した。
協会のトップであり、聖女として認められたノエラよ。お前は聖女としてふさわしい器だ。これから俺と一緒に、この王国を良くしていこうじゃないか。
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