第22話 思惑 ※エリック王子視点

 俺の誘いを拒否するのか。面白いな。少しイラッとしたけれど、落ち着いている。だから、俺は彼女に謝罪した。


「すまなかった。もう言わない」

「……」


 謝罪する。安易に誘ったのは失敗だったな。断るとは思わなかったが、王子である俺が不敬だと言って処罰する可能性を考えなかったのか。少し迂闊だな。


 だが、俺は君を許そう。これから先のことを考えて、彼女たちは有用そうだから。


 彼女が俺の顔をジッと見ている。俺も彼女の顔を見つめる。美人だ。エリーゼよりも良いな。


 ノエラという名前だったか。生意気ではあるが、その美貌なら許せる。これから、どんどん仲を深めていきたい。時間をかけて、ゆっくりと。


「今後は気をつける。協力関係は上手くやっていきたい。こんな些細なことでダメにするのはもったいない。どうだ?」

「……わかりました」


 彼女が頷いた。とりあえず、交渉がダメにならなくて良かった。とにかく、神殿の連中に対する対策は必須。彼女たちの力を頼りにさせてもらわないと困ってしまう。だからこそ、協力的な姿勢を見せておこう。




 話し合いが終わると、冒険者たちはさっさと部屋から出ていった。それを見送ってから、一息つく。


 これから俺は、どうしようか。神殿との関係、新しい冒険者パーティーの協力者、エリーゼからノエラへ乗り換えるタイミング。


「ノエラという冒険者について、彼女の仲間に関しても詳しく調べ直してくれ」

「了解しました」


 待機していた大臣に指示を出して、情報を集めさせるか。役に立つかもしれないと呼び出してみたら、予想外の美女が現れた。どうにかして、彼女を俺の女にしたい。そのために、情報が必要になった。確認し直しておこう。


 実力もあるようだし、神殿の連中と繋がっているエリーゼの代わりに使えそうだ。神殿の連中と距離を置くために、別の連中との繋がりを見せつける。冒険者ギルドの連中と。


 最近、エリーゼも面倒になってきた。以前よりも実力が落ちてきているようだし、乗り換える良いタイミングなのかもしれない。俺も、覚悟を決めないと。


 聖女と結婚するというルールも面倒だな。どうにかして、変えさせよう。


 やはり、王となる俺のパートナーになる女性は美人で優秀でないとダメだと思う。性格が良いのはもちろんだが、賢くて強い女性が理想的だ。残念ながら、エリーゼは失格だな。以前のような実力があれば、まだ考慮する余地はあったのだが。


 もう、エリーゼには興味がない。


 俺に足りないものを埋めてくれるような存在が欲しい。ノエラなら、それが出来そうだ。まずは、彼女と親しくなることから始めようか。

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