第21話 協力するかどうか

 それはつまり、神殿の代わりに私たちを頼りたいということよね。遠回しに言っているけど、わざわざ呼び出して言ってきた。


 感情的には、エリック王子のお願いなんてすぐに断りたい。関わりたくない。彼は憶えていないでしょうけれど、婚約を破棄されたんだからね。結果的に、私は自由にさせてもらっているから、今となってはもういいんだけど。


 でもやっぱり、協力したくないわね。


 しかし現実的に考えると、王家との繋がりを得られるのは大きい。ここは、感情を抜きにして協力しておくべきかしら?


 私は、考えるふりをしながら仲間のジャメルをチラッと見た。すると彼は、小さく頷いた。何か考えがあるようだ。それなら、彼に任せてみましょうか。


「そういうことなら是非、私たちにお任せください」

「おぉ! そうか、やってくれるか!」


 私たちがが協力することを申し出ると、嬉しそうに喜ぶエリック王子。


 とりあえず、これで今回の話し合いは終わり。さっさと帰らせてもらいましょう。そう思って、私は別れの挨拶をしようとしたのだが。


「それなら君たちのことを、もっと詳しく知りたいな。どうだろう、今からお茶でもしないかい?」


 エリック王子は、私の顔だけジーっと見つめながら誘ってきた。他の仲間は眼中にないようだ。何でしょうか、これは。気持ち悪いわね。


 当然、私の言葉は決まっているわ。


「お断りします」

「そう言わずにさ、話そうよ」


 私が断っているのに、しつこく食い下がるエリック王子。しつこい男は嫌われますよ。そうでなくても、私は貴方のことが嫌いなのです。記憶を消す前は、貴方も私のことを嫌いだったでしょう。


 記憶がないだけで、こんなに態度が変わるのね。ありがたくないけれど。


「ありがとうございました。私たちは、これで失礼します」

「ま、待ってくれ!」


 強引に話を終わらせて、席を立った。後は部屋を出るだけ。それなのに、エリック王子に呼び止められる。本当にしつこい。


「何ですか?」

「ただの冒険者が、王子である俺の誘いを断るのか?」


 まさか、そんなことを言ってくるなんて呆れたものね。彼に協力すると言ったのは間違いだった。


「はい、お断りします。何があっても、貴方とお茶するつもりはありません」

「なっ!?」


 ハッキリ断ると、驚くエリック王子。何をそんなに驚いているのかしら。 断られたくらいで大袈裟ね。これくらいのことで動揺するなんて、情けないですよ。


 それとも、断られることに慣れていないのでしょうか。王子だから、今まで自分勝手に生きてきた。私に婚約破棄を告げてきた時もそうだったし、今だってそう。


 やっぱり彼から記憶を消して、離れて正解だったわね。今回の謁見は、その事実を再確認できた。


 でも、断ると言ってしまったわ。まとまりかけていた交渉が決裂して、結局こうなってしまう。後悔はないけどね。

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