第5話 仲間と合流
「エミリー、ジャメル!」
私は馬上から片手を振って、2人に呼びかける。視線の先に、同じように馬に乗って待機していた者たちの姿が見えたから。彼らが居てくれてよかった。安心する。
「ノエラ様ッ!」
見ると癒される笑顔で私の名を呼んでくれた女の子は、一番弟子のエミリー。私の計画に気付いて、一緒に行くと言ってくれた優しい子だ。そんな彼女が、返事をして大きく手を振り返してくれた。そして。
「ご無事で何よりです、聖女ノエラ」
威厳のある声で答えた男性は、大神官ジャメル。彼は私の姿を見ると、ほっとしたように微笑む。幼い頃から私の面倒を見てくれて、色々と苦労をかけてきた相手。
そして今回も、私がかなり無茶をして彼のことも巻き込んでしまった。心配と苦労をかけてしまい、申し訳ない気持ちが込み上げてくる。
聖女である私。女騎士のナディーヌ、一番弟子で女神官のエミリー。大神官であるジャメル。彼らが私の大事な仲間。あともう一人、ここには来ていない商人が協力をしてくれる。
ここに集まったのは、すでに何者でもない、ただの平民になってしまった者たち。記憶を消して、私たちの正体を知る者はいなくなった。
「聖女ノエラ。早速、拠点に向かいましょう」
「そうね」
「行きましょう」
ジャメルの言葉に頷き、エミリーが賛成してくれる。とりあえず今は拠点に行って落ち着きたい。そこで、今後の動きについて話し合っておきたい。
「こちらの道が近道です」
「案内して、ナディーヌ」
ナディーヌが先頭で周囲を警戒しながら進み、私たち3人は慎重に馬を歩かせる。目的地は、今日のために用意しておいた私たちの拠点。
王都を警備する兵士などに遭遇することなく、無事に拠点まで到着。一息つくことが出来た。
「聖女ノエラ。今日はもう、休みなさい。疲れが見えます」
「いえ、それは……」
ジャメルが私の顔を見て言う。そんなに疲れた表情をしていたのかしら。自分では分からない。まだ休むのは早いと思うんだけど。状況の確認や今後について、みんなで話し合う必要があると思った。でも、少し考えてから私は首を縦に振った。
「わかりました。今日はもう、休ませてもらいます」
「それがよろしいでしょう」
今はジャメルの気遣いに感謝して、素直に従うことにした。しっかり休んで体力を回復させる。明日から忙しくなるかもしれないから。
「それでは先に、休ませてもらいます。みんなも無理しないようにね?」
「お疲れさまでした」
「おやすみなさい、ノエラ様」
「ゆっくりお休みください」
おやすみの挨拶をしてから、用意された部屋へ向かった。私は着替えを済ませて、さっさとベッドに潜り込む。実は疲れていたのだろうか、すぐに眠気がやってきた。
聖女の魔法の効果によって、みんなの記憶から私の存在は消え去った。もう私は、聖女じゃないのね。その事実が、なんとも不思議だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます