後編

雨はますます酷くなっていった。


瞳「そんなびしょびしょの三月くんをそのまま帰せない!」

その建前に乗って先輩の家に入ったのは、先輩があまりにガタガタと震えていたから。


濡れた服を先輩に預けて、借りたジャージには先輩の薫りが色濃くて(この頃は、俺は男としては身長低めだったので着ることが出来た)。

しばらくすると落ち着いてきた先輩がコーヒーを入れてくれて、、、


「知っている人ですか?さっきの不審者」

コクりと先輩が頷く。

瞳「うん、、クラスの人、、一度、コクられて断った、、」

なるほどね、、、ストーカーモドキか。

「先輩、彼氏さんに電話して来て貰って!ボディーガードになって貰ってください」

瞳「!駄目だよ、、ハンドボール部は学校で部活の合宿の真っ最中だよ、邪魔出来ない!」

「彼女の一大事です!せめて連絡するべきです。ハンドボール部なら体育館は他の部活と取り合いです。この雨で外が使えなければ、今は練習小休止の可能性が高いです」

瞳「でも、、でもね?、、私、自分から告白して付き合って貰ってるんだ、、嫌われたくない、、彼には最後の合宿なんだよ?」

「、、先輩が電話しないなら、俺が学校に電話します」

瞳「待って!」

先輩の瞳には、恐れと諦めと、、、そして僅かの期待、、、

瞳「待って!、、、分かったから、、するから、待って、、」

瞳「やっぱり来れないって」

酷く落ち込んだ先輩が戻って来た。

くそが!俺は心の中で見たことの無い先輩の彼氏に悪態をついた。


瞳「それどころか、二人きりなんて心配だからそんな後輩はさっさと帰せって、、」

「、、帰って良いっすか?」

瞳「やだ!!」

先輩が泣いている。無理も無い。昨日から色々有りすぎた。

「先輩、御両親は?」

瞳「うち、共稼ぎだから、、夜まで帰ってこない」

「、、、、電話、貸してください」

瞳「、、、え?」

「遅くなるって俺も家に連絡しとかないと」

瞳「三月くん!、、でも、、」

「電話終わったら、俺の腕を縛って写真撮って、、、それで彼氏さんに言い訳しましょ?」

「そう、、そんな感じ、、良いです、動かせない」

瞳「三月くん、ごめん」

「必ず、ハサミか何かを近くに置いてすぐに外せるようにして下さいね。でないと何かあっても俺役立たずになる。それと戸締まりもう一度確認してください」

瞳「こんなところ、お母さんたちに見られたら怒られちゃう。恩人になんてことを!って」

「そこはうまく言い訳しましょ?」

先輩がやっといつもの笑顔を見せてくれて、、、俺も少しだけ気が抜けてしまって、、、


「先輩、、ちょっとだけ眠くなっちゃった。少しだけ寝て良いっすか?」

瞳「良いよ!私のベッド使ってよ!」

初めて訪ねる女の人のベッドで寝る。多分、後数年で躊躇するようになる、、、ホントガキだったんだよな、、、

「何かあったら必ず起こしてくださいね」

それなりに疲れていたんだ、、、言い訳だけどね、、俺はあっさりと寝てしまった、、、と、思う。

あいまいなんだ、、、ここから、、、

ーー

ーー

ーー

瞳「ん、、ん、、ん、、ん、、」

(なんだ?身体が動かない?)

瞳「ん、、ん、、ん、、ん、、」

(気持ち良い?なんだ?)

「ん、、ん、、」

「せ!、、先輩!?」

俺の縛られた腕は頭の上で固定されて、足はベッドの両側に固定されていた。

先輩は服こそ着ていたけど。


「先輩!、、何を!」

先輩は、俺の怒号を引っ張り出して、口に含んでいた。

瞳「ん、ん、ん、ん、、」

「う、、う、、うああぁ!」

童貞の俺に耐える術は無かった、、、

「せ、先輩、、、何で?」

瞳「三月くん、全然小さくならない」


先輩がまた俺の怒号を、、、


瞳「三月くん童貞?」

「あ、当たり前です!」

瞳「じゃあ、三月くんの童貞、貰ってあげるね?今日のお礼に」

「いや、、待って!、、お、おかしいよ!!」

瞳「私、この間、彼氏に無理やり犯られちゃったんだ、だから処女は上げられないけど、ごめんね?」

「あ、、あ!先輩、待って!」

瞳「でもさ、君のって大きいんだ。彼よりもお父さんよりも、、ちゃんと入るかな?心配、、、」


先輩は理知的な人だ。今までだって、俺たちは二人きりで放送室残ったりしたことだってあった。

先輩はこんなことを簡単に出来る人じゃない。

だから、、、この日の先輩は、何かが憑いていたのだと、、おかしかったのだと、、思い出される先輩の瞳には狂気が混じっていた。

先輩がおずおずと俺の上に乗ってくる。

「あ、あ!先輩!ゴム!!」

瞳「だ、い、、じょう、、ぶ、、離れるから、、必ず言って、、ね?あっ!あっ!あっ!あ、、たる、、!


悲しい逢瀬だった。俺の18㎝は先輩をすぐに動けなくしてしまった。にもかかわらず先輩は動かずとも確実に俺を追い詰めていって、、、

「先輩!もう、、もう、、」俺は動けない。

瞳「あっ!あ、あ、あ!もう、、もう、、力が、、、」

「先輩!もう、、駄目だ!」

俺の上の先輩が仰け反り、気絶するように倒れ込んでくる。先輩の中が強烈に振動して、俺はひとたまりも無くって。

先輩の中で三回出したところまでは覚えてる。

気がつくと俺はもう縛られてはいなくて、乾いた自分の服をしっかり着ていて、帰ってきた先輩のお母さんにお礼を言われて、まるで夢だったんじゃないかと。

でもさ、帰りに外まで送ってくれた先輩が、アニメのヒロインのような可愛い声でさ!

「気持ち良かったよ」って、「みんなには内緒だよ」って。

先輩の瞳にはもう狂気は混じっていなくて、それは紛れもなく俺の自慢の素敵な先輩の笑顔だった。

それが俺の見た最後の先輩の笑顔になるとも知らず。

ーー

ーー

ーー

ーー

夏休みが終わって秋が来て、放送部も代替わりをして、三年の先輩たちは来なくなったから、鈍い俺は気がつくのが遅れたんだ。

桂木先輩が二学期から学校に来なくなっていたってことに。


先輩の御両親の会社に何かがあったとか、先輩が彼氏に妊娠させられて学校辞めざるを得なくなったとか、、、色んな噂が聞こえて来たけど、放送部でも三年の先輩以外とは距離があった俺には情報が入って来ることもなく。

ーー

ーー

一回、三年生らしい上級生に絡まれた。


あっと言う間に殴られて、一瞬、気が飛びそうになって、その時、その人が桂木先輩の彼氏だと気がついて、、、頭の中で何かが切れて!

その人の顎の骨は壊れて、俺の左手の中指と薬指の骨は粉々になっていた。

俺は二週間の停学処分になって、放送部を退部した。

桂木先輩は海外に行ったのだと、退部の日、顧問の先生がラーメン食べなから教えてくれた。


先輩が妊娠したのは、本当みたいだった。

それがあの日の俺の種なのか、噂の彼氏の種なのか、分からず仕舞いだったけど、なぜ先輩の彼氏が俺に絡んで来たのか、、、多分、きっと、、、


そして、、、桂木先輩が愛した放送部は、、、崩壊に向かっていったんだ。

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