【試作】ご縁がありませんでした~婚約破棄を告げられたので素直に受け入れてみたら、人生はうまくいった~
キョウキョウ
前編 婚約破棄されました
仕事も日常の細々したことにも、全てに縁があると私は考えている。
物事がうまくいくときは、ご縁に導かれて行動した結果。逆に言うと、何かとうまくいかなかった場合にはご縁がなかったということ。失敗するのは能力が足りなかったとか、誰かが悪かったとかいう理由ではない。
そういう風に私は考えている。
だから、きっと今もそう。
「君との婚約を破棄する」
婚約相手の王子から告げられたのは突然のことだった。しかも、パーティーの最中に。そんなに急いで彼は私との婚約を破棄したかったのね。これも、ご縁がなかったということかしら。それなら、そう考えて受け入れるべき。彼に縋り付いて、嫌なんて言うべきじゃないわよね。
「わかりました」
「ッ!?」
私が答えると、なぜか彼は驚いた表情になる。どうしたのかしら。彼がそんな表情を浮かべた理由は、次の瞬間にわかった。
「やっぱり! お前は隠れて男と会っていたんだな!? なんて女だ!」
どうやら私は浮気を疑われているらしい。誤解されるようなことをしてしまったのかしら。覚えがないけれど。
「私は、浮気などしていませんよ?」
「嘘をつくなッ! 目撃者もいるんだぞ。だから、婚約破棄もすぐに受け入れた! そうだろう!」
「いいえ、違います」
残念ながら信じてもらえない。悲しいな。
「まだ嘘をつくか。おい! この嘘つき女を捕まえろッ!」
本当のことを言っているのに、彼は私を嘘つき呼ばわりする。
さらに、兵士に命令をする王子。まさか、そこまでするなんてね。信じられない。困惑した様子の兵士が、私に近寄ってきた。そんな彼らに、私は両腕を突き出す。
「そういうことらしいので、お願いします」
「えーっと、はい……」
「さっさと連れていけッ!」
命令に従って動く兵士に、私は捕まった。抵抗しても、兵士の彼らには勝てない。そのまま素直に連行される。
会場を出るまで、背後から強い視線を感じた。憎しみのこもった、嫌な感じのもの。
「安心してください。よくわかりませんが、王子の命令なので今だけ従っています。ですが、絶対にご令嬢には乱暴なことはしないと誓いますので。それまで少し辛抱をしてください」
「わかりました。ありがとうございます」
会場から出ると、小声で兵士の人が前を向きながら小声でそう言ってくれた。私も小声で返す。
他の兵士も頷いていた。その言葉は本当みたい。彼らはいい人のようね。これも、ご縁に導かれて行動した結果。酷いことはされないようなので、よかった。
怖かったけれど、とりあえず安心なのかしら。
だけど、この後はどうなるのかしらね。とりあえず私は、素直に受け入れるだけ。結果が出るのを静かに待ちましょう。なるようになれ。
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