422.長い一日の終り

 なんだかんだもう時間も遅いため、リゼたちも今日は寮に戻ることにする。救出した人々はヘルマンの城で今日は一夜を過ごすことになるのだった。彼らにはどのような仕事につきたいかといった質問リストを作ったのでそれに回答をしてもらい、今後の対応を考えるつもりだ。


 ということで、リゼは友人たちやファールを連れて寮へと転移するのだった。それから、皆と別れるとお風呂に入り髪についた砂などを落とし、自分の執務用の机で日記を広げる。リゼが日記をつけたら寝るという話をしたところ、アイシャは自分の部屋へと向かっていき、リアは先に眠るようだ。

 

 日記を付ける前に日課であるアプリ版リッジファンタジアを確認する。


(アプリ版リッジファンタジア、ルイだけタップしても好感度が上がった状態の説明を見ることが出来ないのよね……どういうことなのかな。ルイがキーパーソンということは夢の中で見たパッケージに書いてあったのだけれど、説明文でかなりのネタバレが含まれているから押しても反応しないということ……? まあ、毎日タップししてみましょう。さて、ガチャなども見ておきましょう)


 しかし、特にガチャの内容も目ぼしいものはなかった。その後、交換画面を見てみたが、同様である。神器に生成してもらうよりも交換画面で交換した方がポイント効率が良いため、毎日確認しているがなかなか新しいラインナップが追加されることはない。

 日記に本日のダンジョン攻略や南方未開地での出来事を記録した。ダンジョンでも南方未開地でもヴィズルの力を使うことで安定して立ち回ることが出来ており、何度目かになるが手に入れて良かったと実感する。


(ヴィズル、相当便利ね……試練の最中に今回みたいな感じでジェネラルスケルトンを沢山出されたら混乱状態になるのは確実……試練の支援のために作られた三至宝トリニティ、本当に入手出来てよかったと思うよね……手に入らなかったらどうなっていたことか……きっと沢山の人たちが犠牲になったはず……)


 するとヴィズルがステルスモードを解除した。


『マイマスター、一つ欠点がありますよ。固有空間に入れることが出来るのは同時に五人までです』

「あー、でも十分強いですよね? 固有空間って時の流れが違うのでその中で倒したら、現実では一瞬できっと崩れ落ちますし……。固有空間に入れて倒してを繰り返したらあっという間にそれなりの人数を倒せてしまうと思います。ちなみに通常投影する場合、ジェネラルスケルトンでも何でも良いのですが、一体が倒されると、どれくらい後にその分を再投影出来るのですか?」

『すぐにできますね。マイマスターは常時稼働可能な千体分の軍勢を手に入れたことになりますよ。まあ、五百メートル以内のまやかしにすぎないのですが』

「幻術といっても確実に騙されますからね……困惑しているところに攻撃を加えていけば、こちらが有利に戦闘を行えます。ルナやメットドールで金属騎士や泥人形を千体を出そうと思ったらそれなりに時間がかかりますから、強すぎると思います。あっ、とはいえ……何かに備えて金属騎士は沢山出しておこうかな……。もしかしたら金属騎士の軍勢が必要な時が来るかもしれないし……日課として百体ずつくらい出していくのはありかも。ヴィズル、そういえばですが、他の三至宝トリニティの剣や杖もきっと強力なのでしょうから、広範囲にダメージを与えたり、燃やし尽くしたりですとか出来るのですよね……?」


 リゼの質問に対してヴィズルは同意するが、助言をしてくれる。


『一つお伝えしておくと、他の三至宝トリニティについては、所有者となった者の本質に応じて効果が変わります。よって、実際に戦う際にぶっつけ本番でその効果が明らかになりますね。おこがましいですが、一つアドバイスです。マイマスターの場合、将来的に三至宝トリニティを操る者をまず神器で特定し、ゲートで瞬時に背後に転移、フォーススリープもしくはアイスフェイントで攻撃することにより無力化することが可能ですね。しかし、魔法を打ち消したりするような聖遺物や加護を持っている場合はそのパターンは使えないので、五百メートル以内に転移して、ジェネラルスケルトンなどの軍勢を出せば有利に戦えるかと。マイマスター自身はインフィニティシールドによる結界の中に入って見ていれば安全です。なお、神器が三至宝トリニティの所有者を教えてくれない場合は、仕方ないのでケラヴノス帝国を映像ウィンドウで見張って特定するしかないでしょうね』


 だいぶ具体的なアドバイスであるが、確かにその通りにすればなんとかなりそうだ。

 リゼは日記にヴィズルのアドバイスをメモしてみたが、ふと浮かんだ疑問をヴィズルに質問をする。


「そういえばなのですが、上級ダンジョンでも通常投影すればモンスターは騙されてくれますか?」

『はい、騙されます。ただし、注意点もありますよ。モンスターというのは攻撃を受けたり視界に入ることで攻撃対象を定めるという習性があります。その習性を鑑みると、マイマスターが攻撃を加えればたまたまヘイトが向くこともありますから注意が必要ですね。しかし、例えばジェネラルスケルトンを投影した場合、常にジェネラルスケルトンがちくちく攻撃を加えますから、基本的にはそちらに気を取られているでしょう。ちなみに固有空間に閉じ込めて攻撃すれば倒せる可能性が高いですが、きちんとマイマスターがとどめを刺さないと熟練度やレベルアップにはつながらないので、通常投影で混乱させた状態で倒すのがおすすめですね。あと固有空間ですが、欠点が一つありますので先にお伝えしておきます。五人まで対象を入れることが出来るのですが、固有空間内の時間の流れで一時間が経過すると固有空間が解けてしまいます。ということは、一時間ほど持ちこたえることが出来れば、脱出が可能ということになりますね』


 どうやら上級ダンジョンのモンスターにも効果があるようなのでダンジョン投影施設で一度試してみようと思うリゼである。確かにヴィズルの言う通りでレベル上げや熟練度上げは必要だ。それに自分で倒さないと加護などを得られないし、固有空間は本当にまずい状態では使うかもしれないが、基本的には通常投影で相手を騙しつつ、倒していこうと思うのだった。


『ダンジョン投影施設のモンスターは投影されている関係もあり、固有空間には入れることが出来ませんので補足しておきますね』


 ヴィズルが補足してきた。ついでなので固有空間の仕様について確認しておく。


「ありがとうございます。相手がスキルなどで分身を出していた場合はどうなりますか? 例えば分身が六体であった場合、固有空間には五体までしか入れられないということで、本体と分身四体が入ることになりますか? つまり、分身二体は固有空間に入れられないのではないかと思っていまして」

『そこは本体ごと固有空間に入れることが可能です。一体扱いです』

「そうなのですね……便利ですね。色々と分かってきました。ありがとうございます」


 リゼはヴィズルに感謝した。


(今回のダンジョン攻略と南方未開地の件でヴィズルの使い方を少し理解出来たと思う。上級ダンジョンでも通常投影を使うことで混乱状態に出来るし、固有空間に入れれば実際にダメージを与えられるから、勝てる可能性が増したよね。五百メートルって距離的に結構あるし、状況に応じて使い分けていきましょう。でも神器やヴィズルに頼りすぎて自らを鍛えないというのはなし! 結局、自分を鍛えておかないと神器やヴィズルを使えないような状況になったら大変なことになってしまうから……)


 そんなことを思いつつ、流石に眠くなってきたので明かりを消してベッドへと向かう。

 いつの間にか眠っているのだった。

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