バーチャルダイバーズ(仮)

ken

第1話:仮想世界

 少し発展した未来、すべての人間は現実世界の醜さに嫌気がさしていた。 争いや不自由、好きなことを好きと言えないそんな現実世界、誰だっていやになる。 ここにも一人、そんな現実世界に嫌気がさし、一人深いため息をつきながら歩いていく女の子がいた。 

 

「はぁ~・・・・・。 今日も憂鬱だったなぁ」


 彼女の名は【久保田 綾香】、都内の高校に通う2年生の女の子だ。 彼女が少し憂鬱な気持ちになるのも無理はない。 彼女はいわゆるスクールカーストの底辺に位置しているらしい。


「よしっ! こういう時はあっちの世界でも行ってよ~♪」


 その日の夜、夕飯にお風呂と寝る前の準備を終えた彼女はベッドに入る前に頭にある装置を取り付けた。


「これでよし。 <バーチャルダイバー>起動!! 仮想世界バーチャルせかい|へレッツゴー!!」


 <バーチャルダイバー>、10年前に米国と日本の企業が共同開発したVR装置。 これを使うことにより、意識を仮想世界で構築したアバターの中にダウンロードしてゲームやウインドショッピング、コミュニティを楽しむことが可能となっている。 この<バーチャルダイバー>の普及により世界中の人間が眠りながら仮想世界バーチャルせかいに行けるのだから素晴らしい発明と言えよう。 

 久保田 綾香もまたこの<バーチャルダイバー>のユーザーで彼女はファンタジー世界を冒険するフェアリーワールドストーリーをプレイしている。

 

「【アリス】ログイン完了! それじゃあクエストしゅっぱ~つ!!」


 そんなこんなでゲームを始めた綾香ことアリスであったが意外な出会いはすぐだった。


「ん? 【スカイ】?」

「えっ!アリス!!」


 そこにいたのは、スカイと呼ばれるエルフの姿をした少年と妖精の格好した少女が腕を組んでいた。

 

「違うんだ!これはその・・・・」


 スカイが戸惑っていると、少女はスカイの顔を両手で掴んで自分の方に向けると唇を合わせた。 アリスはその光景に驚きと戸惑いを隠せなかった。


「こういうことよ、あんたなんか最初から遊び相手でしかないの!」


 その一言を聞くやいなや、アリスはその場から逃げ出した。 後ろの方から誰かがなにか言っているがそんなことはお構いなし。

 しばらく走り続けていくと、アリスは見たこともない場所に迷い込んでしまった。

 これが童話の世界であれば不思議な場所かもしれないが、そこにはアバターの姿がなく、ただ廃墟がそこにはあった。


「どこ? ここ・・・・・」


 戸惑いながらももとの場所に帰ろうとするアリスの姿を、廃墟のビルから一人、誰かが見ていることをアリスはまだ知らない。

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