2
「おい吉岡、起きろ。」
担任の先生が私の名字を呼んで起こしてきた。
「進級初日から居眠りとは良い度胸だな。えー、諸君。高校の2年生は学校にも慣れてきて、かといって受験というストレッサーもなく、1番気が弛む時期であるとよく言われています。ゆめゆめ吉岡みたいにならんようにな。」
はーい。という緩い返事が20数人分重なった。引っ張る必要のないセーラーの裾を整えて、しゃんとします、の姿勢を取った。どこからかクスクスと笑う声が聞こえてくるのは、寝てた姿勢のせいで髪の毛がぐしゃぐしゃだからかもしれない。
「えーみっ♪」
放課後になるなり真未が、最前列の左端から、私が座る右端最後列の席まで飛んできた。出席番号1番
「昨日は夜更かししてたの?」
机に置いた両腕を組み、その上に斜めな顎を載せながら私に訊ねてきた。
「ううん、その―」
私は4列並んだ机の向こうの窓外を見た。桜が花びらを散らしている。
「春が暖かくて。」
「あっ!分かる~!ポカポカしてると眠くなるよね~。」
腕から顔を上げて、身を乗り出すように共感してくれる。真未と話していると、ドラマの中のJK過ぎる女子高生を目の前にしている気分になる。要は芸能人みたいってこと。雰囲気とか仕草とか、ルックスとか、色々と。1つ1つが少しずつ浮世離れしてる感じがする。
机の上に置いてたスマホが震える。バイト先の店長からメールが届いていた。
エミちゃんごめん!
藤井有加 fujiiyukadayo@gmail.com
確か、今日って始業式の日だったよね?お願いしたいことは、今日の午後にシフトに入る子が来れない感じで、代わりに来てほしいなって思います。時間は少し早めがいいけど、無理をする必要はございません。
なんとなくグチャッとした文章から忙しさが伝わってくる。ちょうどこの後は何も予定がないし、「12時頃に行きます。」とだけ返信。真未がスマホを覗き込んできてた。
「だれだれ、彼氏くんとか?」
「ううん、バイト先の店長。昼からシフト入れないかって。」
「え、この後カラオケどう?とか思ってたんだけど。」
「あぇ。」
曖昧な赤ちゃん語で返事を返す、緩いコミニケーションをしながら教室を出て、階段を降りていく。燦々とした太陽で気が引き締まりそうな校庭では、サッカー部が半袖半ズボンで走り込みをしていた。汗水垂らして青春真っ只中!という雰囲気の彼等に視線を向けつつ、真未は足音なく立ち止まった。
「どうしたの?誰か気になる人でもいるの?」
私がそう聞くと、彼女はううんと応えた。
「青春してますなあ、って思ったの。」
「なあにそれ、おばあちゃんみたい。」
🕛
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます