行きたくなかった送別会

はづき

送別会の誘い

 24年3月末。私が勤めるスーパーは翌4月に改装を控え、慌ただしく準備が進んでいる中での出来事でした。私は仕入先への大量の返品作業に追われ、頭が回っていませんでした。


「〇〇ちゃん、焼肉行く?」


そんな状態の私に、幹事係のとあるパートさんが声をかけてきました。焼肉……2月に出かけた際に食べたばかりだったけど、焼肉は好きなので……、


「行きます」


私はすんなり返事をしました。日程は改装に入ってからで、店内の工事が入る関係で全員休みの日でした。しかし、この後幹事係の方が発した台詞で、私は後悔してしまうのです。


「Iさんの送別会も兼ねて」


Iさんとは、私の小・中学生時代の同級生です。私は今年で勤務歴10年、現在在籍するオープンメンバーの中では最年少という肩書きがありますが、彼女は5年半ぐらい。最初は早朝で働いていて縁もゆかりもなかったのですが、入社から1年ぐらいで自身の都合で昼間にやってきた。そのついでにチーフになっていた……最初の頃は周囲のパートさん方の多くが関わりにくさを感じていました。


「何なのあの子……社員ぶっちゃって……」


「あの子は生意気だ」


本人がいないところで、私はパートさん方のこういった愚痴をよく聞いたものです。


 彼女は高校卒業後間もなく結婚し、確か2人の子宝に恵まれています。『結婚したら人が変わる』という性格の大きな変化はどこでもあるようですが、私の知る当時の性格の面影一切なく、やはり結婚したら変わってしまうんだな、というのを肌で感じていましたね。


 と、なるのも……彼女がチーフに就任してから、初めて私が仕事でミスを犯してしまった時コテンパンに言われましたね。それも、今の旦那と手を組んだかのように双方から。


 薬の資格者・登録販売者となった今は薬局コーナーで働いていますが、当時私はまだレジ係でした。同じ係のパートさんの1人が私を心配し『気にするんじゃないよ』ってわざわざLINEを送って慰めてくれたことを今でもはっきりと覚えています。


 詳しいことは次の話で書きますが、私のこの件を皮切りに彼女の悪い噂も度々聞くし、私含め数人の決まった従業員に対し、執拗な注意だったり、きつく当たったりするようになったのです。


 だからですね。送別会に行きたくなかったのは。『当日楽しみだねー』って周囲のパートさん方に言われても、頷けなかった自分がいました。


 参加で申し込んだのに、後で不参加を申し出たら何か不審に思われる気がして、どうしようもできなかったのです。

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