進撃のオタク
Rez
#1 20年後の君へ
ん?……夢か……
……なんかとても長い夢を見ていた様な
だけど何だっけ……思い出せないや
あれ……どうして泣いてるんだろう
BJ「オクリオー!」
サトシ「……」
BJが何か言ってる
彼の名前はBJ、同じ地域の別の学校に通っている
お互い域内の大学のドミトリーに住むルームメイトだ
BJはゲームとアニメと筋トレが趣味のアメリカ人、専門学校でゲームのキャラクターデザインを専攻している
BJ「オクリオー!」
サトシ「……」
さっきから何か言ってる……しかもしつこい
BJ「オクリオー!」
サトシ「……何なのそれ?」
BJ「means wake up b***h right?」
サトシ「……ああ、そういう」
言われて昨晩の事を思い出した
普段、日本語に興味など示さないBJが珍しく訊ねてきた
BJ「
サトシ「起きろよ! だよ」
BJ「OK、分かった」
分かってなかった、絶妙に間違って覚えていた
サトシ「ちょっと違う、起きろよ! だよ」
BJ「OK、分かった。オクリオ!」
サトシ「違う違う、起きろよ! お・き・ろ・よ!」
BJ「オ・ク・リ・オ?」
サトシ「……」
朝は忙しい、しつこく一言の日本語習得に執着するBJを尻目に支度をする
BJ「オ・ク・リ・オ?」
サトシ「惜しいけど違うって。お・き・ろ・よ!」
BJ「オ・ク・リ・オ?」
サトシ「……」
ことごとく言えない、とことん言えない、そしてしつこい
あまりにしつこいので次第にツボり始めてきた
サトシ「オクリオって何だよwww」
BJ「wwwオクリオオクリオ~!!」
自分がウケたと勘違いしたBJがドヤってうざい
サトシ「いや面白くないから、オクリオみたいな顔して何言ってんの?今日からお前がオクリオな!」
暫くオクリオ呼びで擦り倒したが段々キレだしたので止めた
食堂で軽く朝食を済ませて登校
何気ない日常の風景────
BJはいい奴だ
年上な事もあってか生意気言っても寛容的に受け流してくれる
ゲームのキャラデザを専攻する彼はファイナルファンタジーのグラフィックをいつもベタ褒めしている
が、ついぞFFをプレイしている所は見た事がなく、もっぱら格ゲーばかりに勤しんでいる
ある日BJが彼の通う学校のオープンキャンパスに誘ってくれた
学校紹介を兼ねて一般に公開する為、その期間は生徒以外も自由に出入りできる
そこで初めて彼がプレゼンする姿を見た
普段ははただのゲーマーにしか見えない彼だが堂々たるものだった
他生徒からの評価は概ね上司向き的な意見が多かった
キャラデザのプレゼンでで評価が上司向きって……
皮肉なのか褒め言葉なのか考えてしまった
一通り生徒のプレゼンを見聞きしてまず思ったのは皆総じて絵が下手ということ
失礼を承知で言えば小学生レベルだと思った
もちろん上手な人はいるだろうし、今回はハンドドローイングのみだったのでデジタル上ではまた違うのだろうとは思う
が、しかしなんだろう、根本的に日本人とは違うのだ
恐らくそれは生まれ育った環境の違いから来る感覚的な部分の相違
物心ついた時から溢れんばかりのアニメ放送にまみれ
スーパーやコンビニへ行けば常にアニメコラボ商品が当たり前の様に並び
あらゆる団体でゆるキャラなるイメージキャラクターがいる
これ程までにアニメに囲まれた特異な環境は、2次元のオリジナルキャラクターを創造する上で絶対的な糧となり違いを生む
知識と経験の裾野の広さが圧倒的に違うのだ、それを如実に感じた
ではアメリカ人のプレゼンがどうだったかと言うと、総じて良かった
誰しもが自信に溢れ、自分の創造するキャラに対する絶対の自信、実直な自己主張、シンプルだが何をどうしたいのかが理路整然としていて相手に伝わるプレゼンだった
そこに日本人の良し悪しと違いを見た気がした1日だった────
その後、用事を済ませて部屋に戻ると先に帰っていたBJが格ゲーに勤しんでいた
見慣れた日常の風景──
サトシ「今日のプレゼン良かったよ」
BJ「だろ、ピース」
返事が軽い
学校より格ゲーの方が優先順位高いのが見え見えだ
いつもゲームばかりしている彼を今日は少し見直したんだけどね……
サトシ「てかさ、BJってほんとギーク*¹だよね」
BJ「違う、俺はオタクだ! ギークはギークだ、オタクはクールだ!」
*¹ 英語でオタクの意味だが、Otakuも英語で一般的に使われる。Otakuの方がニュアンス的に今どきで良いイメージがある
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます