第37話 過去4

次の日の朝早く、スマホで撮った画像の住所に向かった。

どうしても確かめずにはいられなかった。


住所の場所は、住宅街にある一軒家だった。雄介さんは両親と一緒に住んでいると言っていた。


家の前の駐車場に、雄介さんの車があった。

次に目に入ったのは、玄関の前に置かれた、真新しい三輪車。


強く目を閉じた。


親戚の子のものという可能性だってある。そうやって、いいように解釈しようとした。

そんなの違うって本当は気がついているくせに。


目を開けた時、ちょうど玄関のドアが開いて、中から彼が出て来た。


「行ってきます」


その声に、小さな男の子の声が返事した。


「ぱーぱ、ばいばいっ!」


続いて、女性の声。


「今日、私遅いから、保育園のお迎えお願いね」

「わかった」


玄関が閉まる音がして、彼が真っすぐにわたしの立っている方に向かって歩いて来た。

そして、わたしを見つけて、ひどく動揺した。


「なんで……」


「結婚、してたんですね」


「なんでここにいるんだよ? どうやって住所調べたんだよ? 何なんだよ、お前!」



どうして、この人が怒るの?



「ちょっと、ここじゃあ近所の目もあるから……」


わたしの腕を掴むと、狭い路地に連れて行こうとしたのを振り払った。


「わたし、話すことないから。さようなら。もう会うことはないです」


「こっちだって、もうお前と会わないよ!」


そんな言葉を投げつけて、雄介さんは逃げるようにわたしの前から去っていった。



わたし、今まで何をやってたんだろう?

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