私と本ときどき持病

雨宮 徹@クロユリの花束を君に💐

私と本ときどき持病

 あれは、小学1年生のときでした。衝撃的な本に出会ったのは。『ハリー・ポッター』シリーズ。私の人生の方向性を決定した、運命の本。



 ハリー・ポッターは1巻が出版されると、大人気となりました。もちろん、私も同じです。クラスの本棚にあるハリー・ポッターを貪るように読みました。



 そして、2年生のころだったと思います。初めて親に買ってもらった本。それは『ハリー・ポッターと秘密の部屋』。今も大事にしています。スピンはボロボロです。



 当時、ハリー・ポッターは図書室にたくさんありましたから、自分のものだと区別がつくよう、母が名前を書きました。こうして、私の特別な1冊が出来上がりました。もし、私が死んだら、棺に入れて欲しい物です。



 それからでした。中学3年生になるまで、ほぼ毎日ハリー・ポッターを持参しては読書に没頭しました。今考えると滑稽です。図書室にあるのですから。それに分厚く、重い。しかし、それも今となってはいい思い出です。



 こうして、私は本の虫となりました。そして私は思いました。「いつか、小説を書いてみたい」と。



 中学生のある日。私は意識を失い、倒れました。具体的な病名はプライベートのため伏せます。不幸中の幸い、私は頭を打つことはなく、後遺症はありませんでした。しかし、今日に至るまで、10回以上、意識を失っては倒れています。直近だと、3ヶ月ほど前です。そのたびに、「死」と向き合うことになりました。人が死ぬとどうなるのか。自分はいつ死ぬのだろうかと。



 そんな考えを吹き飛ばしたのは、やはり本でした。高校生の頃、ミステリー作家の有栖川有栖先生の本に出会いました。読者への挑戦状という形式を知り、夢中になりました。もちろん、当てられたことは1度もありません。それ以降、ミステリー小説は私という人物を構成する一部となりました。



 やがて、大学受験の時期となりました。私は悩みに悩んで法学部を選びました。ミステリー小説では、犯人が捕まるところまでしか書きません。では、実際に犯罪を犯した人はその後どうなるのか。それが気になったのです。



 そして、就職活動の時期になると、私は現実を知りました。持病があるため、不規則な生活は出来ません。本が好きだった私は、出版業界への道を諦めざるをえませんでした。持病の関係で障害者手帳を持っていましたが、障がい者枠で採用されることはありませんでした。身体的障害とは違い、目に見えない障害だからです。



 そして、1年間、仕事も勉強もせず生きることとなりました。この時期が人生で一番辛かったです。仕事が出来ず、自立ができない。両親は理解を示してくれましたが、私は思いました。自分に生きる価値はあるのだろうかと。



 翌年、運のいいことに障がい者枠で採用となりました。今でもその会社に勤めています。ありがたいことです。



 そんな私ですが、やはり小説家になりたいという想いは変わりませんでした。しかし、公募にチャレンジして現実を知りました。そして、気がつきました。いくら頑張って書いても、1次選考で落ちたら、読者は下読みのみです。悲しいですが、これが現実です。



 そんな悲しみに暮れていた時でした。カクヨムと出会ったのは。この出会いは私の人生を変えました。書く楽しさを教えてくれたのです。



 私のメインジャンルはミステリーとSFです。特にミステリーについては、学生時代にかなりの作品を読みましたから、書くのが楽しくてたまりません。その瞬間だけは、プロの小説家と同じ気分になれますから。



 カクヨムと出会ってまだ半年。しかし、この半年でカクヨムを通して多くの人と触れ合いました。もちろん、顔も性別も分かりません。でも、小説を通して繋がっていることに変わりはありません。



 私は今日も小説を書きます。人生が持病、死と隣合わせでも。生きた証を残すために。

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