(三)-2

 ただし、クローゼットの中に着手する前に、トイレと風呂場のものも荷造りするように、有井は言われた。

 有井はトイレに入り、トイレットペーパーや掃除用具、洗剤類、便座カバーなど、外せるものは全て外してビニール袋に分別して入れて箱詰めし、ガムテープで封をしてから箱の三つの側面にそれぞれ「トイレ用品」と会社支給のマジックインキで箱に書き入れた。


 そのときだった。寝室の方で素っ頓狂な声がした。松阪の声だった。

 有井は何事かと思って寝室に行くと、マットレスをベッドから下ろした松阪が、マットレスを抱えながら立っていた。松阪の視線の先は、ベッドの床板だった。二台あるマットレスは両方とも外されていた。片方は何もないごく普通の状態ではあったが、寝室の奥、窓側の床板の上には、わら人形や謎の石、お札などが敷き詰められていたのだ。


(続く)

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