　一見すると、高級マンションのようだが、スーツケースの後ろには、口を閉じられたビニール袋がいくつも無造作に廊下の左手に寄せられるかのように右側わずかな歩くスペースを作るように置かれていた。

　誰もそうはいわなかったが、いわゆるゴミ屋敷、というやつか、と有井は思った。このアルバイトを初めて半年になるが、今のところこういうケースには遭遇したことがなかった。そもそも引っ越しする人は、物量の多い人はいても、ゴミはある程度片付けている。しかし、今朝はいたと思われるこの部屋の住人の奥さんは、ゴミ捨ても一切せずにどこかへいき、その処理を含めて「引越」を依頼してきたということなのだろう。

（続く）