(二)-8

 エレベーターで十一階まで上がり、部屋の前まで来ると、管理人さんはドアの鍵を開け、少しドアを引っ張ってドアが開くことを確認すると、「終わったら、管理人室に寄って下さい」と言い残して一階へと戻っていった。その際、ドアの隙間から大きなハエが二匹、飛び出していった。

 それは大きいハエだった。普通の二倍くらいあるような、大バエだ。普段日常生活ではお目にかかれないようなサイズだった。しかも、その二匹は互いに交互にすれ違いながら、三人の頭の上を何回か弧を描いてウロウロしてから、どこかへ飛び立って行ってしまった。

 こうして有井たちは、いよいよ本来の仕事に取りかかることができるところまでようやくたどり着いた。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る