(二)-6

「なにかあったの」

 開いているカウンターのガラス窓越しに聞こえた。

「十一階の高茶屋さんところ、引っ越しするらしいんだけど、高茶屋さん、いないんだよ」

「ええっ? 聞いてないわよ」

 主婦はそう言うと、買い物袋を手に部屋の奥の方へ引っ込んでしまった。しかし、その主婦はすぐに戻ってきた。

「ああ、そういえばね、今朝、入口を掃除していたときに赤ん坊を抱えた高茶屋さんの奥さんと会ったわよ」

「お前、そういうことは早く言ってくれよ。で、なんて言ってたんだ」

「今日か明日にでも引越業者が来るので、部屋を開けて欲しいって」


(続く)

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