(二)-5

 その間、松阪が戻ってきた。

「警察だって令状なしじゃ個人の部屋に入れないのに、ましてや引越業者に人の住んでいる部屋を見せるわけにもいかないんだがなあ」

 困った顔をしながら、三人目の松阪の方をカウンターのガラス窓越しにジロジロ見ながら管理人が言った。

「私もこの仕事を長くやっていて色々なお宅にお邪魔してきてますけど、お立ち会いがないケースはさすがになかったですからねえ」

 藤並がそう言ったところで、エントランスのドアが開き、買い物袋を両手に提げた普段着姿の高齢の主婦が入ってきて、三人の脇を抜け、管理人質のカウンターの横にある入口から管理人室に入っていった。


(続く)

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