Desperado

れみまるロック

第1話 主人漢ジャム・ロック

 とある街"トガリィース"


主な特産品はレンガである。良質な泥と綺麗な水という資源に恵まれたこの土地で発展を遂げたこの街は美しい煉瓦造りの街並みに水路が張り巡らされている。レンガがもたらしたモノは美しい街並みだけでは無く、竈門の技術向上のおかげで美味しい焼物が新たなに特産となった。


その街の商店街の一角に

劣悪な環境として知られるブラッククランの冒険者クラン【無頼漢】がある。

更にその中、暗がりの一室にて人一人が入りそうな袋を両の手で掲げる男。


この男こそがこの物語の主人漢しゅじんかんジャム・ロックである。


毛が微塵も無い照った頭に大きな傷が一つ。頬には拳の刺青。筋骨隆々のイかれた漢


そのイかれた男は掲げていた袋に入ったナニかの塊を下に名一杯叩きつけた。


ドシャーーーンと音が室内に響き渡る。


「クソッタレがぁっ!!!」


悪態の咆哮も響き渡った。


その時重厚な鉄扉が開かれ、この暗がりにお似合いなネズミ顔の男がひょっこり顔を出す。


「か、頭ぁ。問題発生でさぁ」

「馬鹿野郎がっ!もう俺様は頭ぢゃねぇ。クラマスと呼べと何度言やぁわかるんだミッキィ。んでこのクソ忙しい時になんだってんだ?」

「そ、それがクロワのバァさんが、またこの辺をウロつきやがってたんで追い返そうとしたんですが言うこと聞きゃーせんもんで…」

「あのババァめ。俺様が直に出る。お前はソイツを見張っとけ。もうおねんねの時間だ」

「へ、へぇ」


クランハウスを出たジャムは報告にあったクロワを見つける。緩い坂道で腰を曲げ杖をついて歩いていた。ジャムは怒号に近い声で話しかけた。


「おいクソババァ。てめぇ何度言ったらわかるんだ?腰痛舐めてたら痛い目に遭うつってんだろうがぁ!」

「おや、ジャムちゃんや。許しておくれ。アンタの顔が見たくなったのさ」

「はっ。こんな面拝みたいなんざ皮肉がキツいぜババァ」

「皮肉なもんかね。ほら見なさい、髪を巻いておめかしだってしてきたんだもの。孫に頼んで沢山巻いて貰ったわ」

「孫に衣装つぅがババァにそんな言葉はねぇんだよ。若い時は似合っただろうさ。だが今はババァだろうが。ほら出すもん出しな」

「ふふ。そりゃあどこかのお貴族様かと思うほど似合っていたわ」


クロワは杖から片手を差し出すとジャムが握る。そして帰路へと促した。


「たくっ。ミッキィの野郎が来ただろうが」

「ミッキーの坊やかい?ああ。来たけど何を言ってるか聞き取れなくてねぇ」

「ミッキーと呼んでくれるなババァ」

「あの子は昔は酷い臭いですぐどこにいるかわかったけど、今はとても良い香りがするから側にいて欲しいわ」

「はんっ。あいつは仕事漬けの毎日だからな。昔と変わらず舌タレミミックさ。つかババァ耳遠いフリしておちょくってたんぢゃねぇだろなぁ?」

「ふふっ。さてね」

「ブツは後でミッキィに持って行かせるからもうくるんぢゃねぇぞババァ。今後はどっちかがブツを流すからよ。それか孫をよこせ」

「いつもいつも済まないねぇ」

「はんっ。心から思ってんのかよ」


他愛もない会話をしながらクロワを送り届けたジャムはクランハウスへと帰った。


暗がりの部屋へ戻ると散々に痛め付けた袋が膨れ上がっていた。


「か、頭!いい感じに仕上がってまさぁ」

「だからてめぇよぉ。まぁいい。だが足りねえ追い撃ちが必要だ」


ジャムは膨れ上がった袋に両手をかざし詠唱を始める。


「"我が宿敵で親愛なる隣人よ母となりてその身を豊ませろ"クーボ・キン」


詠唱が終わり両の手から燐光が発せられると膨れていた袋が更に膨らみを増す。


「後は開けてみてどんなツラしてるかお楽しみだ」

「でさぁ」


ジャムとミッキィの2人は今日一番の悪い笑みを浮かべた。

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