第2話 改行だらけの段落なしの文
「うちの娘……?」
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「うちの娘が、何かしているの……?」
なんだか嫌な予感がする。
私の殺気を感じ取った同僚が、「! うぅ、…ち、ちがうかもぉ〜……、おほほー」とたじたじになっていく。
実はうちの娘はうつ病だけではなく、被害妄想だかなんだかでテレビやブルーレイデッキの電源コンセントがささっていると盗聴、盗撮されてしまう、という症状もあり。更にはネットになにも書き込んでいないのに、自分はTwitterで小説を書き上げて世界を救った! という妄想まであった。
また、なにかしでかしてあの娘はとうとう個人情報みたいな物を流出させたのでは?!
ネットで、何かしているのでは?
「まあ、でも、違うか。今回のエッセイは、ひどいのよ」
とスマートフォンをタッチする同僚。
「ふーん?」
聞きたくない。
ネットはよくわからない「悪」を感じる。単純に「詐欺」とか「なりすまし」とかではなくて、私の感覚では古いけれど。
新しいものは全て「あく」なのだ。
昭和の考え、と言ってもいいが。少なくともそれで人生ネットやスマートフォンで振り回さらたことはない。
昔はイタズラメールで「アドレス変えたよ! 登録お願いね!」という謎のメールに。
「すみませんが人違いです」とうっかり返信してしまい。
そこから、「え、すみません、困りましたよね? でもアドレス合ってるはずなんです。お名前教えてもらっていいですか?」という返信が来て、長女に相談したら。
そうやってじわじわ距離を詰めていくのが「ヤツラの手口だよ」とふふんっ、と笑って注意喚起してくれた。
実は夫もうつ病だった頃があり、窓際に家電や炊飯器、ポットが置いてあると、
「毒を入れられるかもしれないだろ!」
とやはり被害妄想が強かった時がある。
嫌なことを思い出してきた。
そんなことより、だ。
「ねえ! いま読んでる漫画がねっ!」
私は同僚の会話をすり替える。同僚は何か言いたそうだったが私の話に耳を傾ける。
……そして今日も残業して、今夜は17時半くらいに帰った。
息子はリビングに布団を敷いて寝ていて、長女はスマートフォンに、なにやら、行がいくつか開いた、独特な形で文章を打っている。
……怪しい。
この行動。
この画面。
一体、なんなのかしら。
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