討伐完了

 怪魔の数はもうげんなりするくらいには多かったが、それでも敵の質は僕の相手ではなかった。


「馬鹿、ナ……我ラガ唯一人、二……」


「らーすと」


 サクサクと怪魔たちを倒していき、最後。

 この場にいた中で、最後に残った怪魔の頭を僕は自身の小さな足より蹴り飛ばすことで消し飛ばす。


「ふー、流石に疲れるわ。こんなに多いと」


 僕が戦闘に乱入後、怪魔たちの注意はこちらの方にすべて向けられると共に、この場にいた日本の陰陽師を初めとする面々は呆然とこちらを見てくるばかりだったせいで、結局自分が一人で殲滅したし。

 ある程度減らした段階で彼らにパスしておけばよかった。


「……問題だよなぁ、これ」


 そんなことを考えながら佐藤さんの方に向かって歩く僕はちらりと視線を隣で浮いているドローンへと向ける。

 怪魔たちの存在と、それらを狩る者たちの姿をリアルタイムで配信されてしまっており、今もコメント欄は爆速で動いている。

 ……まぁ、良いか。僕が考えても仕方ないし。


「お待たせ、佐藤さん。待たせてごめんね」


 ドローンでその実態をすべて撮影していたことを一旦見なかったことにした僕は佐藤さんの元へとやってくる。


「お、お疲れ……様?で、私の反応はあっているの、かな?あの……本当に何がどうなっていたの?」


「んー?まぁ、僕が色々とありったけを全部生放送しちゃったから、どうせいずれ、政府の方から連絡が来るだろうから。それを待つのがいいんじゃないかな?」


「そ、そう……?」


「そうそう」


 色々と説明するのも面倒だし、政府が何とかするでしょ。

 公表するにせよ、隠ぺいするにせよ。


「ど、どうなっている……」


 そんな風に僕が諸々のことを政府に放り投げることを決意していた時、自分が叩き起こした陰陽師の男が震えながら声を上げる。


「何で、呪力無しが平然と、あれだけの怪魔を倒せるというのだ。どう、考えてもおかしいだろうっ!なぜ、呪力もなしで……」


「ん?知らないよ。ただ、僕は生まれながらに身体能力が異常なまでに発達しているんだよ、拳一つで楽に怪魔を殺せるくらいにはね。その理由はまるでわからないけど」


 何故かと聞かれても普通に困る。

 何故、呼吸できるのかと聞かれているようなものだ。


「よし……それじゃあ、フラワー。周りが再起動するのを待とうか。僕はここから脱出することが出来ないからね」


「えっ!?」


 僕は呪力ないから魔界に入ったり出たりするための誰でも使えるような基礎的な陰陽術は使えないからね。

 しょうがないね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る