聖女候補に選ばれましたが男の娘です

床柱熊

第0話 設定画面

『カチカチッ』マウスのクリック音が狭い部屋の一室でこだまする。華やかな曲とエンドロールが始まる最初の頃は心を奪われていた曲だが今は聞くだけで嫌になる。

「ああ…まただめか」パソコンのゲームをそのままにし、ゲームチェアに【篠崎裕也(しのざきゆうや)】は項垂れる。


      【アンリミテッドラバーズ】


数多く選ばれた聖女候補の中の主人公が様々な攻略キャラと関わり苦難を乗り越え成長し、聖女を目指していく乙女ゲームだ。

男が乙女ゲームだと馬鹿にされるかもしれんが、これは他の乙女ゲームと違う所がある。それがこのゲームでは同じ展開が繰り返されない所だ。

「???」だと思う、俺も最初はそうだったしかし、それは一人の攻略キャラをクリアして最初から始めた際に気付いた。セリフが変更されているのだ攻略キャラのセリフも全て、これを見かけた時は腰を外して椅子から転げ落ちたものだ。そしてこのゲームはフルボイス、自分が好きな声優の声がたくさん聞けると知った俺はこのゲームに人生のすべてを費やしていた。

しかし、俺はこのゲームに絶賛苦しめられていた。

        【達成率90%】

俺は3年このゲームが発売してから3年を費やしてもクリアができなかった。何10週もプレイしてやっとここまで来たが、なぜだがそこから一歩も前進していなかった。

「ごほごほごほっ!!」

何度も乾いた咳がでる吐いたのどから赤い血がゲーミングテーブルに飛散る。長い間不摂生な生活をしてきたせいかこのごろ吐血するようになった。

「せめて…このゲームをクリアしたい」いつものように収まるかと思われたが、視界がぐんにゃりと曲がる俺は椅子ごと地面に倒れた運悪く強く頭を地面に打ち付けてしまい意識が薄れるその時薄れゆく視覚で見たのは

【アンリミテッドラバーズ】のゲーム画面だった。

        【達成率90.1%】

そう見えた。「なんで…い…まっ」長年やってきて長い間変わらなかった数字が変化したのだ俺はそのまま1人静かにこの人生に幕を閉じた。

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