068 bonus02, rasputin/ラスプーティン

※今回は残酷描写を含みます、苦手な方はご遠慮ください。




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【AD:2117年, 革命新暦:195年、冬】



身体の疼きが止まらない。

あの日、リザ様の姿を見て以来、頭からあの美しい姿が離れない。



グループと言われる同じような子供地たちとともに育てられた。

皆同じような子ばかりだったが、叩くと異様に痛がったのでそのうち近くに居させてもらえなくなった。

同じようにされたって何とも思わなかったが、DDT達は赦してくれなかった。

それでも折檻と言われて痛みを受けさせてくれたので、それでも良かった。


そのうち誰も居なくなり、別の場所へ移動させられた。

私も皆と同じように廃棄処分になるかと思ったが、タイプの違う同じくらいの年頃の子供たちに囲まれ、これからはここで暮らすと偉そうな女性に宣言された。

その日のうちにひょろっとした背の高い男の子に「お主も我輩と一緒にリザ殿と過ごしてみぬか?」と誘われ、よくわからないまま一緒に過ごす日々が始まった。

DDT…今はPCBというのだろうか、彼らは構ってくれなくなったが、替わりにリザ殿?とひょろっとした男子、ドラクル氏が色々教えてくれたので、我慢することも学習した。

彼らの喜ぶことは良い事、アベル様の喜ぶことは良い事、彼らの喜ばないことは悪い事、シティアイのやることは悪い事…


良い事ならば痛いのだろうけれど、彼らは喜ばなかったので控えた。

シティアはユリア氏と一緒に居たので、捕まえてリザ殿へ差し出せばシティアも喜ばない、リザ殿も喜ぶから良い事…と思ったけれど、これは失敗した。

連れて行こうとしたら抵抗されその場でPCBを呼ばれたので、リザ殿やドラクルは喜ばないと思ったから。

それ以来ユリア殿は近寄らなくなったので、もう捕まえる事は出来なさそうだ。



リザ殿は他の子達と仲良くするのが良い事だと言っていた。

だから、シャスチとシスナータッチを捕まえてリザ殿へ差し出せば仲間?も増えてリザ殿も喜ぶからよい事…と思ったけれど、これも失敗した。

小柄なシャスチを捕まえたものの、直ぐにシスナータッチに二人とも持ち上げられ、私だけ投げられた。

うんと痛かったし嬉しかったが、シスナータッチはそのまま私の両腕と両足を砕き職員たちの使う通りへ投げ捨てたので、それ以上は何も出来なかった。

その時シャスチに云われた「サイコ野郎!」の言葉は、なんでか忘れられない

身体は、PCB達に治してもらった。



リザ殿は他の子達と仲良くしたいと言った。

オベズヤーナのサルを捕まえて来て飼えば、仲良く出来るよう教育できるかもしれない。

もう二度も失敗している、そのまま捕まえても来ないのは知っている。

だから、シャスチとシスナータッチの良く使っている粉を持ってきて、サルに与えた。

今度は成功した。

サルは気持ちの良い事が大好きだと、勝手にぺらぺら喋ってくれるので楽だ。

そのまま折に閉じ込め、その日はそのまま部屋に帰った。


次の日、リザ殿とドラクル氏に叱られた。

「これ、どういうつもり?

 いくら手駒を作るにしても、檻に閉じ込めて食料はおろか排せつの世話もしないのはダメでしょ…

 PCB達に見つからないように後始末しておきなさい、サルには私から言っておくから」

リザ殿に叱られてしまった。喜んでいない。

「グリゴリも時々突拍子もない事するでござるな…。

 どれ、手伝ってやるから掃除用具持って来なされ」

ドラクルはサルと話しPCBにはこの事を話さないようにするようだ。喜んでいない。



どういう事だろう。

私の行動は二人とも喜ぶことではなかったのだろうか。

では、痛ければ喜ぶだろうか。

シャスチとシスナータッチは粉で喜んでいた、ならば痛くても喜ぶだろうか。

試しに彼らの使う小屋の、いつもは使っていない勝手口にちょっとした仕掛けを作ってみた。

発火装置だ。


芥子から阿片を生成する際に有機溶剤を揮発させ、成分を濃縮させていることは知っている。

アセトンや塩酸、その他を手に入る限り貯めこんでいることを。

PCB達は学習用と放置しているが、精製時の気体成分に火花を散らせば、爆発する。

果たして、二人は小屋に戻り精製を始めたようだ。

私は授業に戻り、知らせを待った。

しばらくしてドラクル氏がいつものリザ殿追っかけを始めると呼びに来たので同行すると、小屋が爆発した。

予定通り。

ドラクル氏はなんでか咽び泣いていたが、周囲の者に聞いたら私は悪くないようなので、悪くないのだろう。

その救助活動見学の際、本当のリザ様を見る事が出来た。


美しかった。


身体全体は焼け焦げ、元の身体の形は判るものの、ぎゅっと縮まった姿勢は生まれたばかりのようで、焦げ跡のひび割れから時折見えるピンク色の肉体は、人間の本当の姿を現しているようで、周囲に漂う有機成分や燃焼の芳香と相まって実に幻想的だった。

こんなに素晴らしいものを見たのは、生まれて初めてだ!

その日は、勃起が収まらず大変だった。



ドラクル氏はあの爆発以来話しかけてもあまり返事をしてくれない。

“キャラ”というものを決めるためにフンガと返事してみたり一人称をオラと言ってみたりドラクル氏から言われるがままにしてきたが、私は私だ。

ならば、私は私の楽しい事を追求しよう。


もしかしたら、リザ様以外にも爆発や燃焼で美しい姿を見せてくれるかもしれない。

博士たちの会話で漏れ聞く実験体だろうか、外部の人間を使って試せば少しは解るだろうか。

私が喜ぶのだ、これは良いことに違いない。

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