060 tr10, spiritual awakening/魂の目覚め

ーーーーーーーーーー

【AD:2115年, 革命新暦:193年、夏】



ねえ聞いて、シーちゃん。

わたし達の身体って、なんでも出来るようになってたんだって。

アベル様もダリヤちゃんたちも言ってたから、本当だよ。

なんでも受け入れられる、誰でも通じてあげられる。


うんと前に、シーちゃんを恨んで除け者にしちゃってごめんなさい。

わたし達ね、いっぱい仲間を増やそうってみんなでお話ししたの。

お薬はもったいないけど、でもシーちゃんのためだもの。

こんどみんなで集まるときに、一緒に行って楽しくしようね!



…遂に、来てしまった。

半年ほど前からドベちゃんの様子がおかしかったけれど、精々会話の時に焦点が定まらないとか、一人の時に天井を見つめてニコニコしてるとか、14グループの子たちと集まってるのに誰もが誰とも会話になっていないとか…

良くないと思いつつ、実害はないから特別手を出さなかった僕も良くないんだろう。

けれどもユリアやリザと相談したって、僕らがどうしたらいいのか良い案は浮かばなかった。

だって、アベル様が主催してるってことは所長も是としてる、ってことだもん。


とはいっても、ドベちゃんのお誘いを受けるのは抵抗がある。

絶対に近寄りたくないもん、あの集まり。

春先にDDTや博士たちに相談してドベちゃんと部屋を分けてもらったから、あとはなるべく強い子たちと一緒にいるしか思い浮かばない。

巨人組の子たちに協力してもらって、なんとかしよう。



ーーーーーーーーーー

【AD:2115年, 革命新暦:193年、秋】



お腹空いたなー。久しぶりだし、最近の出来事もお話ししながら一緒にご飯食べよー。


こないだのドベちゃんから集まりへのお誘いを受けてからしばらくさ、日中はキミやケンにーちゃん、フーちゃん、メドやんたちとずっと身体を鍛えて、夕方から夜はシティアやリザ達と一緒に図書室や娯楽室へ出入りして警戒したかから、やっと最近あの集まりへの参加は諦めてもらえたみたい。

ありがとね。


リザも悪い子じゃないんだけど、同じ14グループ内のダリヤとは徹底的にそりが合わないみたいで、やっぱり部屋を移動してもらってた。

あっちはあっちで他グループの鍔迫り合いも同時進行で面倒見てあげてて、山ほど愚痴を吐いてたなぁ。

あの子も面白いよねー。



聞いたかもしれないけど一時ケンにーちゃんがいなくなってたのは、新授業…カリキュラムの適合を確認するためだって。

ケンにーちゃん、ヴォルケインは01で一番早生まれの3歳年上、アベル様は02の2歳年上、あと僕ら03から14までの12人はだいたい同じくらいの誕生日で同い年ってことだからみたい。

皆おかしな特徴を持ってるけど、きっとカリキュラムの中身がわかればどういうものかも教えてくれるかな。

僕は今住んでる施設も大体隅々まで行っちゃったし、外の塀?囲い?も、行っていいところは大体探検しちゃったから、もっと外側に行けるといいな。


検体同士の試合はね、僕は巨人組とだと勝ったり負けたりであんまり強くないけど、走り回ったりコッソリ隠れて見つからないようお出かけするのは僕が一番だよ!

もー、ケンにーちゃんやメドやんは強すぎ!

大きい奴らってどうしてあんなに動きも速いのかな?懐に入ってリーチ差で…なんて嘘だよ、肘とか腰とか、筋肉につぶされるだけだもん。

逆にフーちゃんとキミのわんにゃんコンビは、僕と割にいい線の勝負…でしょ?

あの二人よりは体格小さめなのと、闘い…ってよりは別の能力もありそうだもん。

フーちゃん鼻いいって言ってたしね。


僕はあちこちでみんなと仲良くしてもらってるけど、他にあぶれた普通の体格の子とか小人の子は訓練に参加して身体鍛えるの、あんまり好きじゃないみたい。

07のアーちゃんなんて、ほとんど見たことないもん。なんか避けられてる?

ま、でも無理して誘ったって良くないし、僕は僕で楽しければいいや。


楽しいと言えば、11と12のシャスシスコンビ!

小さいと大きいのでいっつも一緒にいて、なんかしらコソコソやってるあの子たちね。

授業出たくないのは11のシャスで、ハラヘッターハラヘッター言ってるのが12シスかな。

シスなんてケンにーちゃんよりデカいのに、動きが鈍いから簡単にボヨーンだ。

シャスは…独りだとあんまり好きくないな、いっつも上目遣いでニヤニヤしてて、今のドベちゃんみたい。

二人揃うと強気になるのか、シャスを肩車したシスが『ぶおーん』なんてドッタンドッタン走り回ってたもんね。

まったくマジンガーZのパイルダーか!って言いたくなっちゃった。


あ、マジンガーっていうのはね、ユリアが大好きなDDTのロミオさんから教えてもらった別世界のアニメーションなんだよ!

僕らの世界…図書館にも閲覧できるアニメーションはいっぱいあるんだけど、たくさんありすぎてどれが面白いのかよくわからないんだ。

DDTや司書の人は良く知ってるけど、変なこと聞くと記録されて『新革命プログラム』なんておかしな教育映像と課題文なんてツマラナイことやらされちゃう。

別にロミオさん好きでも嫌いでもないけど、ユリアが好きみたいだし反対する理由もないから、色々教えてもらってるんだ。



…なーんていろんなお話を聞いてもらえるだけで、一緒にいるだけで僕は嬉しいんだよナージャ。

毎度もにょもにょしなくても、ちゃんと言いたいことは伝わってる。

ホントにかわいいな、ナージャは。


キミが自分から他の人にお話しするの苦手なのは知ってるから、時々こうして朝ごはんの時に一緒にいてニコニコしてだけでも、ナージャ独り占め!キャーカワイーってなるの。

そんでフーちゃんに報告して追いかけっこするまでがワンセット。

なんでって?…あはは、ヒミツ!


ナージャはそうだね、フーちゃんともっと組手すれば判るかもしれない、なるべく一緒にいてやりなよ!

エテ公なんて相手してる場合じゃない、その辺フーちゃんとよく相談したほうが良いよ。

いざとなったら、僕みたいな小さい子は役に立たないからさ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る