第35話 いじめられてた過去


 

 まだ、俺が地球で高校生をやっていた時の話だ。


『おら! くらえ松代ぉ!』


 俺の通うアルピコ学園。

 その体育館裏にて、俺は……いじめを受けていた。


 倒れている俺の腹部を蹴っているのは、背の高い男子生徒だ。  

 木曽川きそがわコミオ。


 俺のクラスの中心人物であり、いじめグループの主犯格だ。


『まじ調子乗るなよ。てめえ。底辺のくせによぉ!』


 何度も何度も、木曽川は俺の腹を蹴飛ばす。


味噌川みそがわ泥川どろかわ、おまえらもこいつを蹴ってやれ』

『『うぇーいw』』


 木曽川には取り巻きが何人かいた。

 そのうち、特に仲の良かった生徒が、味噌川と泥川だ。


 木曽川がどくと、味噌川、泥川が俺の腹や顔面を蹴飛ばす。

 普通に考えて、人の顔面や腹部を蹴っていい道理はどこにもない。


 だが、やつらは、やるのだ。

 俺が無抵抗なのを良いことに、体育館裏に連れてきては、何度も。


 何度も、何度も、やつらは俺に暴力を振るった。


『おい松代よぉ。おまえまじで調子乗るなよな』


 倒れ伏す俺の髪の毛をひっぱって、顔を近づける。


『【愛】は、おれの女だ。いいな?』

『…………』

『愛はよぉ、てめえごときが仲良くしていい女子じゃねえんだよ。わかったなぁ!?』


 木曽川は俺を怒鳴りつけ、地面に転がす。


『いくぞ、味噌川、泥川』

『『うぇーす、木曽川くん』』


 泥、味噌、木曽川は俺を放置していずこへと去っていく。

 俺は痛みに耐えながらしばらく寝転んでいると……


『いた! 松代くん!』

『……神坂みさか


 俺の元へ、一人の綺麗な女が駆け足でやってきた。

 彼女は神坂みさか 愛。


 クラス1の美少女だ。(俺が廃棄されるってとき、唯一、女神に反抗してくれた優しい女子である)

 明るい性格に、美しい見た目から、学校内外でとてつもなく人気がある。


『だいじょうぶ、松代くん!?』


 神坂みさかは俺のもとへやってくると、心配そうな顔を向けてくる。

 ……こいつは、カースト底辺の俺にも優しくしてくれる、本当にいいやつなのだ。


 だが、そのせいで、俺は木曽川たちに目をつけられている。


『誰にやられたの!? 誰が君にこんな酷いことを……』

『大丈夫だ』


 俺はフラフラと立ち上がる。


『だ、大丈夫じゃないよ! これ絶対にいじめじゃん! 犯人を探し出して、きちんと罰を受けてもらおう!』


 ……言えるわけがない。

 うちのクラスにいる、おまえに気のある男子から、いじめられてるなんて。

 いじめの遠因が、この子にあるって。


『俺のことはほっといてくれ』

『ほっとけないよ!』


 神坂は本当にいいやつなのだ。

 俺みたいな貧乏で、なんの取り柄もない、いじめられっ子にも優しくしてくれる。


 だが。


『あのさ、ほんと、いいから。俺にかまわないでくれよ。……うざいんだよ』

『!』


 ……ああ、神坂さん。

 ごめんよ。傷つけて。でも、まじでもう俺に関わらないほうがいい。


『ごめんね……迷惑だったんだね』

『……ああ。悪いな。じゃあな』


 さよなら、俺の初恋。

 そう思いながら、俺は彼女の横を通り過ぎる。


 俺に優しくしてくれる、この女の子のことを、俺は好きだったんだ。

 でも、それは世間が許してくれなかった。


 神坂さんは良いこだし、クラス1の、学校1の美少女。

 俺とじゃ、分不相応すぎるのだ。


 それに、この学校に通っている限り、木曽川からは逃れられない。

 神坂さんと付き合うためには、あの木曽川をどうにかしないといけない。


 が、木曽川はクラスの中心人物bで、金持ち、しかもイケメン、しかも、腕っぷしも強い。


 あいつがいる限り、俺の望みは叶わない。

 なら、もう諦めよう。


 さよなら、俺の初恋……


『松代ぉ!』


 神坂さんの元を離れて歩いてると、木曽川にぶん殴られた。


『なに、愛を泣かしてんだよごらぁ!』


 ……いや、それは理不尽すぎるだろ。

 俺は何度も泥川、味噌川、木曽川の3人にボコられた。


 こっちはおまえの望み通り身を引いたじゃないか。

 それでもなおいじめられるのかよ。


 なんでだよ。

 どうして、俺がこんなめに合わないといけないんだよ。


 生まれか?

 そういう運命なのか?


 ……当時の俺は理不尽な運命に対して、しょうがない、そういうもんだと、そう自分に言い聞かせて、自分に言い訳しながら生きて来た。


 でも。

 もう、そんな生き方はやめる。


 俺は運命なんて信じない。

 運命を決めてるのが、あんなくそったれな女神だっていうならな。


 俺の生きたかは、俺が決める。

 俺は神を殺す。そして、それを邪魔するやつらには容赦しない。


 悪いな、味噌川。

 おまえには個人的な恨みしかないが、これはあくまで、女神の情報を得るために必要だからやってることだ。


 別に個人的な恨みを晴らすためにはやってないから。

 おまえが素直に女神のことをゲロってくれるなら、まあ、手加減してやってもいいぜ。


 ただ、手加減っていっても、俺基準でだけどな。

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