第30話 賢者から超レアアイテムもらい超強化


 創造の大賢者ジョン・スミスは俺と同じ女神に恨みを抱くものだった。

 すでに死んでしまった爺さんの代わりに、俺が女神を殺すことにした。


『わしはここに閉じ込められてから今日まで、神を殺すための様々な道具を作った』


 俺たちが案内されたのは、小屋の中に設けられた工房。

 無数の工具、そして、試作品とおもわれる道具がたくさん置いてある。


『おおお! すごいぞおまえさまよ!』


 今までずっと黙っていた妖刀が、興奮気味にいう。


『この場にあるのは、すべて呪物だぞ!』


 ……爺さん、よっぽど女神への鬱憤が溜まっていたんだろうな。

 己の力と才能、そして人生を賭けて、こんなたくさんの呪物を作ったのだ。


『おぬしにピッタリの呪物をまず授けよう。そこの棚を見よ』


 爺さんが指差す先には、真っ黒な義手が置いてあった。


「うわ、なにこれ。真っ黒な肌に、黒い爪。悪魔の手みたい……」

『これは義手・黒獣の手じゃ』


 なるほど、これは義手だったか。


「黒獣ってなんだ?」

『地上に存在した、あらゆるものを食う悪食の化け物。その手を義手に改造したものじゃ』


 黒い腕がガタガタと震えている。

 飢えているのがわかった。そして、俺の魂を欲してるのが。


「どういう呪物なんだ?」

『装備すると、黒い獣の腕が手に入る。そいつは自在に大きさや長さを変えられる上、触れたものを食べるのだ』


「触れただけで、食べられるのか。硬いものでも?」

『ああ。どんなにかたいものでも、逆に魔法とかでも、その手で掴んだものは食べることができる』


 おお、これはいい。

 俺は魔物を食べることで強くなれる。


 が、たとえばすごい硬い敵など、食べることが物理的に不可能なてきっやつはいた。

 そいつを食えば強くなれるのに、食えなくて、残念な思いをしていた。


 でも、この黒獣の腕を装備すれば、それだって食べてもっと強くなれる。


「呪物ってことは、デメリットがあるんだろう?」

『もちろん。装備することで、黒獣に肉体を徐々に喰われていく』


 なるほどね。

 エリスが心配そうに俺を見てくる。

 爺さんの言葉をエリスは聞こえてないのだ。よかった、こいつに余計な心配かけずにすんでさ。


 俺は黒獣の腕を掴んで、左腕にくっつける。

 ぐちゅん! という音とともに、黒い獣の腕がくっつく。


「ぐ……!」


 痛みで意識が持っていかれそうになる。

 何か鋭い牙で噛みつかれてるかのようだった。


 でも。


「わるいな。俺は、呪いに耐性があるんだよ」


 左腕が完全にくっついていた。

 呪物と俺の体が同化したってことだろう。


『信じられん! 呪物に、体を食われてない! なんという強度の肉体!』


 俺は左手を握ったり閉じたりする。

 うん、思ったように動かせるな。


 左手を広げる。

 する、ぐぁ……! と左手が巨大化した。


 獣の手は通常より大きく、より禍々しい姿へと変貌していた。

 赤いラインが指先から腕にかけ走っており、脈打っている。


 腕の力を抜くと、元の大きさに戻った。

 見た目が禍々しすぎて、目立っちまうな。


 あとで包帯でも巻いておこう。


『すごい、すごいぞおぬし! おぬしなら、わしが用意した呪物を、すべて装備できる!』


 ぐるりと工房内を見渡した。

 結構な数の呪物が陳列されている。


 これ全部爺さんが作ったのか。そうとう、あのクソ女神に対して恨みつらみが溜まっていたんだろう。


「呪物、全部よこしな」


 爺さんは喜んで俺に呪物の使い方をレクチャーし、その全てを譲ってくれた。

 ブラックウーズのなかに収納した。


『だいたい継承できたな。さて、残るは、ワシの魂だけじゃ』


 ……爺さんの魂?


『転生者の魂は死後になっても、元の世界には戻れんのじゃよ』

「!? なんだと……? ほんとうか?」


『うむ。魂はこの世を永遠に彷徨いつづけ、やがて魂の火が消えて消滅する定めなのじゃ』


 ……あの、くそ女神が。

 俺らをよんでおいて、死んだ後は元の世界に戻さず、放置かよ!


 ゴミカスがよお。


『少年、わしを喰らえ。さすれば、おぬしは創造の力が手に入る』

「…………」


 女神への復讐を最優先にするなら、爺さんの魂を取り込んで、新しい力を身につけるべきだろう。


 でも、それでいいのか。

 だってそれをすると爺さんが消滅しちゃうじゃないか。


『心優しき少年よ、ありがとう。でもいいのだ。ほっといても魂は自然消滅する。なら、誰かの役にたってから、消えたい』


 爺さんから切実な思いが、言葉を通じて伝わってきた。

 それほどまでに、俺に神を殺して欲しいと思ってるのだろう。


「…………わかった」


 俺は爺さんの意思をつぐことにした。

 下手な同情はしないほうがいいとおもったのだ。そんなもので、この人の気が晴れるとは思えなかったからだ。


『ありがとう、少年』


 俺は左手を広げる。

 腕が大きく変形し、黒い獣へと変貌する。


 爺さんの魂を掴み、そして、握りしめる。

 がぶり! 黒い獣が爺さんの魂を捕食した。


 爺さんの記憶、知識、そして……創造の魔法の力が、流れ込んでくる。

 ゼロから1を作り出す、最強の魔法。


 そして爺さんの知識。経験が手に入った。

 過去最大級にレベルが上がった実感を覚えた。

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