第25話 二人の力でボスを倒す



 迷宮のボス、憤怒の巨人と戦う俺とエリス。

 省略弾は残り4発。


 この四発を使い、相手を倒す必要がある。


「いくぞ、エリス!」

「OKダーリン!」


 エリスは走り出す。

 巨人はエリスをターゲットに定めたようだ。


 それはそうだ。

 やつにとって、最も脅威となっているのはエリスの氷魔法だ。


 それに、エリスを狙うことで魔法の発動を防げる。

 

『GIGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!』


 憤怒の巨人が左腕を振りかぶり、そしてものすごい勢いで、拳を振るう。

 エリスめがけてすさまじい早さのパンチが飛んでくる。


 が。


「【停止弾】!」


 ズドンッ!


 俺の放った特殊弾が巨人の腕に当たる。

 瞬間、パンチが停止する。


『GIA!?』


 はっ、無様に驚いてやがるぜ。


『なるほど、【無力】を付与した弾丸か。無力は相手の運動エネルギーを無くす。結果、物理攻撃を無効化することができるというわけだな』


 もっとも、ずっと無力化できるわけじゃない。

 効果時間はせいぜい数秒。

 だが、その数秒あれば……。


氷槍連射フリーズ・ランサー!」


 エリスが左腕に魔法をぶち当てる。

 凍り付いた腕めがけて、俺は狙撃。


 ズドンッ……!

 パキィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!


 左腕も消し飛んだ。


『エリスを陽動に使い、敵に攻撃をさせ、特殊弾で停止からの、魔法使用のコンボか。ははっ! 良い連携じゃないか!』


 妖刀が俺たちの連携を褒める。それが……俺にはうれしかった。


「いくぞエリス! あと三発!」

「うん!」


 憤怒の巨人が目から熱光線を放ってきた。

 物理攻撃じゃない。さっきのように停止させることはできない。


「エリス!」

「だいじょうぶ、見えてるよ!」


 エリスは飛び上がって半身を捻り熱光線を避けた。

 なんという神業。

 やるじゃないか!


『おまえ様よ、もう一発くるぞ』


 巨人がエネルギーを貯めている。

 バカが。同じ攻撃が二度通じるわけないだろ!


 俺は特殊弾をセット。

【無形】を付与した貫通弾にくわえて、別スキルを付与する。


「くらえ!」


 ズガン!

 放たれた弾丸が憤怒の巨人の土手っ腹に命中する。


『無形弾に加えてなんのスキルを付与したのだ?』


 見てればわかる。

 巨人が熱線を放つ。


 ドガァアアアアアアアアアアアアアン!


「!? 自爆した!? なんで!?」


 巨人の頭が吹っ飛んだのを見て、エリスが驚く。

 一方で妖刀は感心したように言う。


『なるほど、【無制御】を付与したのか! 熱光線は魔法、つまり発動には集中して魔力をコントロールすることが必要となる。だが無制御を付与することで、コントロールできなくなり、結果魔法が暴発したのか! やるな!』


【無事】による防御の弱点として、遠距離攻撃に弱いと言うものがある。

 遠距離、特に魔法攻撃は脅威となるため、どうにかできないかとあれこれ考えた。


 エリスに魔法発動の仕組みについて聞き、そこから、【無制御】を相手に付与して魔法の発動を邪魔する方法を思いついたのである。


『魔法を無効化するのではなく、暴発させることで身を守り、かつ相手にダメージを与える。すごいいい発想だな!』


 魔法の暴発により巨人の頭が吹き飛ぶ。

 ぐらり、と巨人が体を傾けた。


「チャンスだ! 畳み掛けるぞ!」


 頭を失い身体をまともに動かせないでいる。

 この機を逃してはならない!


 エリスはすぐさま魔法を相手に当てた。

 そして俺が狙撃。


 ドガン!


「あと二発!」


 ドガン!


「あと一発!」


 氷魔法+狙撃によって、憤怒の巨人の体はもうあと下半身だけになっている。


「ラスト!」


 ドガン!

 パキィイイイイイイイイン!


 巨人は完全に消し飛んだ。

 はぁはあ……


 俺はその場にへたり込みそうになってた。

 か、勝ったか?

 

「やったね! ダーリン!」


 エリスが俺に抱きついてくる。


「私たちの勝利ですよ! まさか、二人でこの高難易度ダンジョンのボスを倒しちゃうなんてっ! すごいすごーい!」


 ボスの強さはダンジョンの難易度に比例すると言う。

 憤怒の巨人は相当強いはず。


 これで、ほんとに倒せたのか?


「なんだかあっさりすぎやしないか?」

「ダーリンが強すぎただけだよ!」


 そうかな。

 そうだろうか……

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