第17話 幼稚園児、人生を語る

 あんた、羅美先生なんて好きなの?


 ほんと見る目ないわね~。


 どうせ『テキパキ仕事こなしてるからかっこいい~』とかでしょ?


 あんなのそれなりの時間経験してりゃ誰でもできるわよ。


 それを『大人の余裕~』とか『包容力~』とか、直線的に拡大解釈しちゃって、人間はそんなに単純じゃないのよ。


 あんたはもうちょっと人間に深さがあることを知らないとダメね。


 浅瀬でパチャパチャ戯れるのもいいけど、深海は宇宙よ。無限の世界が広がってるわ。


 そんな深くて広い恋をしなきゃ。


 あんた愛についてろくに考えたことないんでしょ?


 え? それぐらいあるって?


 もしかして、『恋と愛の違いは~』とか、『友達の好きと恋愛の好きの違いは~』とか、知らない誰かの真意もわからない問いに、どうしてその二つに分けるのかとか、そもそも二つに分ける必要があるのかとか、自分で問いを立てようともせず、すぐに悩む自分に酔っちゃってどうでもよくなってるんじゃないでしょうね?


 まあいいわ。ろくに人間について、心について、愛について知らないのに何かを考えたって、まともな答えが出るはずないもの。


 もっと人間を知りなさい。


 もっと心と向き合いなさい。


 そして悩みなさい。愛とは何かについて、自分なりの答えが見つかるまで。


 あら、お迎えが来たみたいだわ。


 まあ、思う存分、回り道するといいわ。


 それじゃあごきげんよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る