拝啓、誰かへ

烏目 ヒツキ

聞こえますか?

「えー、今夜も始まりましたァ! ミッドナイ~~~~トゥ、チューズディぃ! この放送は、地元のラジオ局の電波をジャックして送信しておりますぅ……。


 えぇー、あれから赤い空が続きますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。

 やっぱ、あれですかね。

 相変わらずぅ、どこかにこもってる感じですかねぇ。

 いやぁ、驚きましたよ。ほんと。

 朝起きたら、誰もいないんだもの。

 初めはねぇ。ボクぅ、食料求めてスーパーに行く日々だったんですよぉ。いや、残ってないだろうな、って思ったの。災害とかあると、コンビニとスーパーは、まずアウトだから。うん。

 だけどねぇ、いっぱいあったんですよね。

 冷房ガンガン効きまくりで、まあ、電気は通ってるんですけどぉ。


 とりあえず、肉は全部貰いましたねぇ。ふふふぅ!

 もう食い切れねえってくらい、霜降り食ったんですよぉ。えぇ。

 金のない生活を送ってたんでぇ、まあ、高いタレなんか貰っちゃってねぇ。うん。あんま味分からなかったけど、美味しかったですねぇ。はは。


 でね。皆さんご存じの通り、なんかぁ、情勢とか変だったじゃないですかぁ。だからぁ、そのぉ、……戦争? とか始まってんのかなぁ、って思ったんですよねぇ。てことは、いよいよ近隣諸国とかぁ、西側の荒くれが侵略するんかなぁ、って怯えましたけどねぇ。


 いやぁ、……来ないんですよねぇ。

 ネットが使えてた時はねぇ。SNSとか見てたんですよ。

 英語なんて分からねえのに。外人のアカウントばかり探して、日本の人間も探して。時刻ねぇ、見たらぁ、あー、7月11日だったかなぁ。そこで、みんな登校しなくなっちゃっててさぁ。

 世界同時によ?

 すっげぇなぁ、って思いましたねぇ。


 あ、そうだ。

 今、夏なんですよ。夏。

 暑いですよぉ。

 ボクなんてねぇ。パンツ一丁で歩いてるんだもん。

 はは。補導されちゃうねぇ。いや、職質か。

 お巡りさん見てたら、来てほしいけどねぇ。うん。


 ボクね。ラジオの知識とかはあるんですよぉ。うん。

 前に簡単なラジオ制作とかやった事あってねぇ。

 職場体験もラジオ制作現場でしたからねぇ。


 そうだ。

 皆さん、食料困ってませんか?

 実はですねぇ。ボクぅ、始めちゃいました。

 農業。

 お米はねぇ。調べたけど、めんどくさかったなぁ。

 でも、畑仕事はね。やっぱ、家庭で手軽にできるくらい、まあ、簡単なものですよ。キュウリね。たくさん採れたんだ。ミカンと合わせてね。ビタミン補給しながら、あー、夏バテ対策。バッチリです。


 ボクねぇ。

 海岸沿いにある赤い屋根の家に住んでるんで。

 えー、よかったら遊びに来てください。

 赤い屋根だけ覚えてれば、うん。分かります。

 他、全部黒いから。

 これ、地元の人にしか届かないから、同じ県内だと思うんだ。


 それではぁ。また、来週♪」


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

拝啓、誰かへ 烏目 ヒツキ @hitsuki333

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ